結論
- 独自ドメインのメールの持ち方は、大きく「グループウェアに含まれるメール」「レンタルサーバーに付属するメール」「メール専用のホスティング・転送」の3方式です。どれを選んでも、DNSに書く認証レコードの考え方は同じです。
- 最低限そろえるのは SPF(TXT 1行)・DKIM(TXT 1行+送信側で署名を有効化)・DMARC(TXT 1行、まず
p=none) の3つです。 - Googleの送信者ガイドラインは、個人用Gmailアカウント宛てに送るすべての送信者にSPFまたはDKIMを求めています(詳細は6節)。
1. 独自ドメインのメールを持つ3つの方式
| 方式 | 内容 | 向いている場面 | 確認しておく点 |
|---|---|---|---|
| A. グループウェアに含まれるメール | Google Workspace、Microsoft 365 のように、メール・カレンダー・ファイル共有が一体になったもの | 複数人で予定や文書も共有する | 利用者の人数で契約が決まる。DKIMは管理画面で有効化が必要な場合がある |
| B. レンタルサーバーに付属するメール | Webサーバーの契約にメールボックスが付いているもの | すでにサーバーを借りていて、メールは少人数 | SPF・DKIM・DMARCに対応しているか、設定画面の有無を公式の仕様で確認する |
| C. メール専用のホスティング・転送 | メールだけを提供するサービス、または受信を既存のアドレスへ転送する仕組み | サイトは静的ホスティングで、サーバーを借りていない | 転送だけでは「独自ドメインから送信」はできないことがある。送信の経路を確認する |
2. SPF・DKIM・DMARCは何を確認しているのか
| 仕組み | 確認する内容 | DNSに書く場所 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| SPF | そのメールを送ってきたサーバーのIPアドレスが、ドメインの持ち主が許可したものか | ドメイン直下のTXT | RFC 7208 |
| DKIM | メールに付いた電子署名が、ドメインの持ち主が公開した鍵で検証できるか | セレクタ._domainkey.ドメイン のTXT | RFC 6376 |
| DMARC | 差出人(From)のドメインがSPFかDKIMで認証されたドメインと一致するか。失敗時の扱いと報告先 | _dmarc.ドメイン のTXT | RFC 7489 |
3. レコードの書式(example.com の例)
SPF
example.com. TXT "v=spf1 include:_spf.example.net ~all"
v=spf1で始めます。includeは送信サービスが指定する値をそのまま入れます(上の値は架空です)。- 末尾の
allに付ける記号は、-(fail=許可していない)、~(softfail=おそらく許可していない)、?(neutral)、+(pass)の4種類です。 - SPFレコードは1ドメインに1つだけ。2つあると評価結果は permerror になります。送信サービスを増やすときは、1行の中に
includeを足します。 include・a・mxなどDNS問い合わせを伴う項目は、合計10回までという上限があります。
DKIM
selector1._domainkey.example.com. TXT "v=DKIM1; k=rsa; p=(公開鍵)"
- セレクタ名と公開鍵は、メールサービス側が発行した値を使います。
- レコードを置いただけでは署名されないサービスがあります。管理画面で署名を有効にするところまでが設定です。
- Googleのガイドラインは鍵長1,024ビット以上を必須、2,048ビットを推奨としています。
DMARC
_dmarc.example.com. TXT "v=DMARC1; p=none; rua=mailto:dmarc-report@example.com"
v=DMARC1が先頭、次にpが必須です。pの値は3つです。
| 値 | 受信側への依頼 |
|---|---|
none | 特別な扱いを求めない(報告だけ受け取る) |
quarantine | 認証に失敗したメールを疑わしいものとして扱う(迷惑メールフォルダ等) |
reject | 認証に失敗したメールを拒否する |
ruaは集計レポートの送り先です。省略するとレポートは届きません。adkim・aspfは一致の厳しさで、省略時はどちらも relaxed(組織ドメインが同じなら一致とみなす)です。pctの省略時は100です。
4. 設定の順番
- 送信に使うサービスをすべて書き出す(メール本体、請求書サービス、フォームの自動返信、メール配信など)
- SPFを1行にまとめて登録する
- 各サービスでDKIMを有効にし、指定のTXTを登録する
- DMARCを
p=noneとrua付きで登録する - 集計レポートで、自分の送信がすべて認証に通っていることを確認する
- 問題がなければ
quarantine、次にrejectへ段階的に上げる
上げるかどうかは、レポートを読む手間と、なりすましを止めたい度合いで決めます。
5. 確認表
| # | 確認すること | 方法 | 済 |
|---|---|---|---|
| 1 | SPFのTXTが1つだけ | dig +short TXT example.com で v=spf1 が1行 | □ |
| 2 | DKIMの公開鍵が引ける | dig +short TXT セレクタ._domainkey.example.com | □ |
| 3 | DMARCが引ける | dig +short TXT _dmarc.example.com | □ |
| 4 | 実際のメールで3つとも pass | 自分あてにテスト送信し、受信したメールのヘッダーで SPF / DKIM / DMARC の結果を見る | □ |
| 5 | 差出人ドメインと認証ドメインが一致 | 同じヘッダーで From のドメインと、SPF・DKIMのドメインを見比べる | □ |
| 6 | 自動送信するサービスも漏れなく認証 | 請求書・フォーム等からテスト送信して4を繰り返す | □ |
6. Googleの送信者ガイドラインの要点
| 対象 | 求められること |
|---|---|
| 個人用Gmailアカウント宛てに送るすべての送信者 | SPFまたはDKIM/送信元IPの正引き・逆引きDNS/TLSでの送信/迷惑メール率を0.3%未満に保つ/RFC 5322に沿った形式 |
| 1日5,000通以上 | 上に加え、SPFとDKIMの両方/DMARC(p=none で可)/Fromのドメインと SPF または DKIM のドメインの一致/宣伝メールのワンクリック登録解除 |
操作手順は各サービスの公式ヘルプを確認してください。
出典(取得日: 2026-09-20)
- RFC 7208 Sender Policy Framework (SPF) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc7208.html
- RFC 6376 DomainKeys Identified Mail (DKIM) Signatures https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc6376.html
- RFC 7489 Domain-based Message Authentication, Reporting, and Conformance (DMARC) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc7489.html
- Google Workspace 管理者ヘルプ「メール送信者のガイドライン」 https://support.google.com/a/answer/81126?hl=ja