UPSの容量計算と、雷サージ対策の仕様の読み方

季節の備え公開

この記事は特定の製品の使用レビューではありません。公式仕様と公的情報をもとに整理しています。 ・仕様の取得日

結論

  • UPSの容量は VA(皮相電力)とW(有効電力)の2つで表示されます。つなぐ機器の合計が、VA・WのどちらもUPSの出力容量を下回るように選びます。
  • メーカーの選定手順は「①給電方式を選ぶ → ②つなぐ機器の総容量を計算する → ③バックアップ時間を決める」の3段です。総容量には余裕を見ます(オムロンの選定方法では1.2〜1.5倍程度。倍率はメーカーにより異なります)。
  • バックアップ時間は「安全に終了するのにかかる時間の2倍以上」が目安です。カタログの値は、周囲温度20℃・バッテリが新品の状態での値です。
  • 雷サージ保護は、仕様表の項目と試験条件を組にして読みます。UPSのサージ保護は「減衰させる」機能であり、停電対策とは別の項目として確認します。

UPSの部分(1〜4節)は主にオムロン ソーシアルソリューションズの公開資料に沿い、山洋電気・富士電機の公開資料と照らし合わせました。「VAとWの両方で出力容量を下回らせる」「余裕を持たせる」という骨格は各社共通ですが、余裕の倍率、力率の仮定値、バックアップ時間の目安はメーカーにより異なります(本文の数値はオムロンの選定方法での値)。雷サージの部分(5節)は主に音羽電機工業の公開資料に沿っています。選ぶときは候補の製品のメーカーの資料で確認してください。JISの規格原文とは照合していません。

1. VAとW、力率

  • W(ワット)=有効電力。 機器が実際に消費する電力です。
  • VA(ボルトアンペア)=皮相電力。 電圧×電流で表す、見かけ上の電力です。
  • 力率=W÷VA。 0から1の間の値で、W=VA×力率の関係になります。

UPSの仕様表には、出力容量が「500VA/300W」のようにVAとWの両方で書かれています。オムロンの仕様項目の説明によると、VA・Wのどちらか一方でも超えると過負荷の保護が働きます。

2. 必要容量の計算

手順

  1. つなぐ機器を決める(停電時に動かし続けたいものだけに絞る)。
  2. 各機器の電源容量(VA・W・Aのいずれか)を、本体の銘板や仕様書で確認する。
  3. 片方しか分からないときは力率で換算する。オムロンの選定方法は、力率が不明な場合、VAを求めるときは力率0.6、Wを求めるときは力率1.0で計算するとしています(どちらも大きめに見積もる向きです)。山洋電気の解説は力率1.0(VA=W)で計算するとしており、候補にした製品のメーカーの方法に合わせます。
  4. VAの合計とWの合計をそれぞれ出す。
  5. 合計に余裕(1.2〜1.5倍程度)を掛け、VA・Wの両方を上回る出力容量のUPSを候補にする。

換算(力率が不明のとき): VA = W ÷ 0.6 / W = VA × 1.0 / A表示は100Vの環境で VA = 100 × A

機器の表示のどこを読むか

機器の表示の例読む値計算欄への入れ方
本体の銘板に「消費電力 ○○W」WW欄にそのまま。VA欄は W÷0.6
銘板に「○○VA」VAVA欄にそのまま。W欄は VA×1.0
銘板に「AC100V ○A」AVA欄は 100×A。W欄は同じ値(力率1.0)
ACアダプタ式の機器アダプタの「入力(INPUT)」側の表示UPSにつながるのはアダプタの入力側なので、出力(OUTPUT)側の値ではなく入力側のAで上の行と同じに計算
表示が見つからない取扱説明書・メーカーの仕様ページの「消費電力」「定格」最大の値を使う

記入式の計算欄

機器表示WVA
(例)デスクトップPC150W150250
(例)モニター30W3050
(例)ルーター・ONU12W1220
合計(ア)192320
余裕を掛けた値(ア×1.2〜1.5)約230〜288384〜480

(例の数値は説明用の仮の値です。空の行に自分の機器を書き足し、合計を取り直します)

  • この例では、出力容量が「480VA以上かつ288W以上」のUPSなら、1.5倍の余裕まで満たします。VA・Wの片方でも足りなければ、1つ上の容量を候補にします。
  • オムロンの仕様項目の説明では、バックアップ運転時の出力が矩形波の機種は、PFC電源を搭載したパソコン・サーバーや、誘導性の負荷(コイル・モーター・トランスなど)には使用できないとされています。接続できる機器は各UPSの取扱説明書で確認します。

3. バックアップ時間の見方

  • バックアップ時間は、つないだ機器の消費電力で変わります。仕様表の負荷(W)ごとの時間の表やグラフで、2節で出した自分の合計Wに近いところを読みます。
  • オムロンの選定方法は、終了に必要な時間の2倍以上のバックアップ時間が確保できるかを確認するよう勧めています。
  • カタログの値は「周囲温度20℃、バッテリが初期状態」での値です。バッテリは使ううちに劣化し、時間は短くなります。
  • バッテリの期待寿命も温度などの条件つきの値です。置き場所の温度と、交換用バッテリの入手方法を確認しておきます。

4. 3つの給電方式

方式ふだんの動き停電時の切り替え出力波形メーカーが挙げる主な用途
常時商用給電商用電源をそのまま出力し、バッテリを充電しておく瞬断が起こる(一般的なOA機器ではほぼ問題にならないとされる)正弦波または矩形波(シリーズによる)パソコン、ハブ、ルーター、小型NAS
ラインインタラクティブ常時商用と同じ構造に、電圧の変動を補正する機能(AVR)を加えたもの常時商用と同じ基本構造のため、瞬断が起こる正弦波サーバー、ストレージ
常時インバータ給電常にインバータを通して出力し、同時に充電する。ノイズの除去と電圧の調整を常時行う切替時間が発生せず、無瞬断正弦波サーバー、ストレージ、産業機器

(オムロン「UPSの給電方式」「仕様項目の説明」による整理。方式の名称と分け方はメーカーにより異なり、富士電機は4方式、山洋電気は独自の方式を加えて説明しています。出力波形の欄は同社の製品シリーズでの例です)

選ぶ基準は「つなぐ機器が瞬断と波形をどこまで許容するか」と「設置場所の電圧が安定しているか」です。出力波形と機器の相性は、機器側の取扱説明書でも確認します。

5. 雷サージ保護の仕様の読み方

雷サージは、落雷によって生じる短時間の異常な過電圧・過電流で、電源線や通信線を通って建物内の機器に入ってきます。保護に使われる部品(SPD=サージ防護デバイス)は、過電圧が来た瞬間に低抵抗になって、サージ電流を接地側へ流します。オムロンの仕様項目の説明では、UPSの雷サージ保護はバリスタ素子を内蔵して減衰させるもの、とされています。電話回線やLANの線を保護する「回線サージ保護」は別の項目で、対応する機種としない機種があります。

仕様表の項目読み方
最大放電電流(Imax)・最大サージ電流保護部品に流せるサージ電流の波高値。単位はAまたはkA。どの電流波形での値かを見る
8/20μs試験に使う電流波形の表記。電源用SPDのクラスⅠ・クラスⅡ試験で使われる
公称放電電流(In)8/20μsの波形で繰り返し耐えられる電流の波高値。音羽電機工業の用語集は、JIS C 5381-11で15回以上の耐性が求められると説明している
電圧防護レベル(Up)・制限電圧サージが来たときにSPDの端子間に現れる電圧の最大値。後ろの機器にかかる電圧の目安
ジュール(J)表示ジュールはエネルギーの単位。どの条件で測った値かが併記されているかを見る
保護する経路電源線だけか、電話回線・LANなどの通信線も含むか

読むときの注意は3つです。

  1. 数値は試験条件と組で読む。 波形や回数の条件が違う値どうしは、そのまま比べられません。
  2. 経路を数える。 パソコンには電源線のほかにLANケーブルもつながっています。電源側だけ保護しても、通信線から入る経路は残ります。
  3. 保護には上限がある。 仕様表の上限を超えるサージは防げません。雷が近いときに電源プラグと通信線を抜いておくのは、サージの通り道そのものを断つ、費用のかからない方法です。

6. 確認表

#確認すること
1停電時に動かし続けたい機器を絞った
22節の計算欄に、各機器の表示とW・VAを書き込んだ
3余裕(1.2〜1.5倍)を掛けた値が、VA・Wの両方でUPSの出力容量に収まる
4終了に必要な時間を測り、その2倍以上のバックアップ時間が自分の負荷で確保できる
5つなぐ機器に合う給電方式と出力波形を選んだ
6置き場所の温度と、バッテリの交換時期・交換方法を確認した
7雷サージ保護の数値を、試験条件と組で確認した
8電源線のほかに、LAN・電話回線など通信線の経路を確認した

出典(取得日: 2026-09-20)