小さな事業のIT手帖

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判断・選び方

停電でNASが壊れる前に。UPSは何VAを買えばいいか、計算はこの3行

公開 更新 読了11分

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事務所のNASが、落雷の後の一瞬の停電で落ちた。再起動したらボリュームの修復が始まり、半日ファイルが開けない。運が悪いと修復が終わらず、バックアップから戻すことになります。UPS(無停電電源装置)を買おうと調べ始めると、今度は「VA」と「W」の2つの数字が出てきて、どれを買えばいいのか分からなくなる。

私の見立てはこうです。小さな事務所のUPSは、停電中も仕事を続けるための物ではありません。NASを安全に終了させる数分を買う物です。 そう割り切れば、載せる機器は減り、容量は小さくて済み、計算は3行で終わります。この記事を読み終えると、自分の機器の銘板から必要なVAとWを出し、給電方式とバックアップ時間まで決めて、候補の仕様表を自分で読めるようになります。

先に結論:計算はこの3行

  1. 載せる機器の W の合計と VA の合計を出す(片方しか分からなければ力率で換算する)
  2. それぞれに **余裕(1.2〜1.5倍)**を掛ける
  3. VA・Wの両方が、UPSの出力容量を下回る機種を選ぶ

UPSの容量は VA(皮相電力)と W(有効電力)の2つで表示されます。片方だけ見て買うのが、いちばん多い間違いです。

雷サージ対策のタップは別の話なので、記事を分けました。

→ 雷のあとルーターが壊れた。雷サージ対策タップは、仕様のどこを見て買うか

目次(7)
  1. 1. 何を載せるか:私ならNASとルーターだけにする
  2. 2. VAとW、力率
  3. 3. 必要容量の計算
  4. 4. バックアップ時間の見方
  5. 5. 3つの給電方式
  6. 6. 確認表
  7. 出典(取得日: 2026-09-20)

1. 何を載せるか:私ならNASとルーターだけにする

計算の前に、載せる機器を決めます。ここからは私の目安です。

10人以下の事務所なら、UPSに載せるのはNAS(またはファイルサーバ)と、ルーター・ONU・ハブだけにします。デスクトップPC本体とモニターは載せません。

理由は3つあります。

  • 停電で壊れて困るのは、書き込みの途中で電源が落ちたディスクです。PCの作業中のファイルは、こまめな保存とアプリの自動保存で損失が数分に収まります。NASのボリュームの破損は、全員の仕事が半日から数日止まります。守る順番が違います。
  • PCとモニターを載せると、必要な容量が一気に上がります。容量が上がると本体も交換用バッテリも高くなります。
  • ノートPCは内蔵バッテリーがUPSの代わりになります。載せる意味がありません。

ルーターとハブを一緒に載せるのは、NASがUPSからの信号で自動終了するだけなら必須ではありませんが、消費電力が小さく、瞬間的な停電でネットワークごと落ちるのを防げるからです。

やめたほうがいいのは、レーザープリンターや複合機を載せることです。印刷の瞬間に大きな電力を使うため、小容量のUPSは過負荷になります。暖房器具や掃除機を同じUPSのコンセントに挿すのも同じ理由でやめてください。

もう1つ。UPSは、NASと連動して自動で終了できる組み合わせを選びます。停電が夜中や休日に起きたとき、誰も終了の操作はできません。NASのメーカーが公開している対応UPSの一覧で、候補の機種があるかを買う前に確認します。連動しないUPSは、バッテリが切れた時点で結局落ちるので、時間を少し先送りするだけです。

2. VAとW、力率

  • W(ワット)=有効電力。 機器が実際に消費する電力です。
  • VA(ボルトアンペア)=皮相電力。 電圧×電流で表す、見かけ上の電力です。
  • 力率=W÷VA。 0から1の間の値で、W=VA×力率の関係になります。

UPSの仕様表には、出力容量が「500VA/300W」のようにVAとWの両方で書かれています。オムロンの仕様項目の説明によると、VA・Wのどちらか一方でも超えると過負荷の保護が働きます。

3. 必要容量の計算

手順

  1. つなぐ機器を決める(1節のとおり、停電時に守りたいものだけに絞る)。
  2. 各機器の電源容量(VA・W・Aのいずれか)を、本体の銘板や仕様書で確認する。
  3. 片方しか分からないときは力率で換算する。オムロンの選定方法は、力率が不明な場合、VAを求めるときは力率0.6、Wを求めるときは力率1.0で計算するとしています(どちらも大きめに見積もる向きです)。山洋電気の解説は力率1.0(VA=W)で計算するとしており、候補にした製品のメーカーの方法に合わせます。
  4. VAの合計とWの合計をそれぞれ出す。
  5. 合計に余裕(1.2〜1.5倍程度)を掛け、VA・Wの両方を上回る出力容量のUPSを候補にする。

換算(力率が不明のとき): VA = W ÷ 0.6 / W = VA × 1.0 / A表示は100Vの環境で VA = 100 × A

機器の表示のどこを読むか

機器の表示の例読む値計算欄への入れ方
本体の銘板に「消費電力 ○○W」WW欄にそのまま。VA欄は W÷0.6
銘板に「○○VA」VAVA欄にそのまま。W欄は VA×1.0
銘板に「AC100V ○A」AVA欄は 100×A。W欄は同じ値(力率1.0)
ACアダプタ式の機器アダプタの「入力(INPUT)」側の表示UPSにつながるのはアダプタの入力側なので、出力(OUTPUT)側の値ではなく入力側のAで上の行と同じに計算
表示が見つからない取扱説明書・メーカーの仕様ページの「消費電力」「定格」最大の値を使う

記入式の計算欄

私の勧める「NAS+ルーター類」の構成で書くと、こうなります。

機器表示WVA
(例)NAS(2ベイ)30W3050
(例)ルーター・ONU12W1220
(例)スイッチングハブ6W610
合計(ア)—4880
余裕を掛けた値(ア×1.2〜1.5)—約58〜7296〜120

(例の数値は説明用の仮の値です。自分の機器の銘板の値で書き直し、合計を取り直します)

  • この例では、出力容量が「120VA以上かつ72W以上」のUPSなら、1.5倍の余裕まで満たします。つまり、各社のいちばん小さい容量帯で足ります。VA・Wの片方でも足りなければ、1つ上の容量を候補にします。
  • 比べてみてください。同じ計算にデスクトップPC(150W)とモニター(30W)を足すと、合計は228W・380VA、余裕を掛けて約274〜342W・456〜570VAになります。1節で「PCは載せない」と書いた理由が、この差です。
  • 余裕の倍率は、私なら1.5倍側を取ります。後からハブやNASを1台足すことはよくあり、そのたびにUPSを買い替えるほうが高くつくからです。
  • オムロンの仕様項目の説明では、バックアップ運転時の出力が矩形波の機種は、PFC電源を搭載したパソコン・サーバーや、誘導性の負荷(コイル・モーター・トランスなど)には使用できないとされています。接続できる機器は各UPSの取扱説明書で確認します。迷うなら正弦波出力の機種にしてください。数千円の差で相性の心配が消えます。

4. バックアップ時間の見方

  • バックアップ時間は、つないだ機器の消費電力で変わります。仕様表の負荷(W)ごとの時間の表やグラフで、2節で出した自分の合計Wに近いところを読みます。
  • オムロンの選定方法は、終了に必要な時間の2倍以上のバックアップ時間が確保できるかを確認するよう勧めています。
  • カタログの値は「周囲温度20℃、バッテリが初期状態」での値です。バッテリは使ううちに劣化し、時間は短くなります。
  • バッテリの期待寿命も温度などの条件つきの値です。置き場所の温度と、交換用バッテリの入手方法を確認しておきます。

ここからは私の目安です。

  • 終了にかかる時間は、実際に測ります。 NASの管理画面からシャットダウンして、ランプが消えるまでを時計で計るだけです。数分のことが多いはずです。その2倍以上が、自分の負荷(W)で確保できる機種なら足ります。「30分もつ機種」を探す必要はありません。
  • バッテリの交換時期は、買った日に予定表へ入れます。 よくあるのは、UPSを入れて安心し、数年後の停電でバッテリが劣化していて数秒で落ちた、という形です。発覚するのは停電の当日です。メーカーが示す期待寿命から交換の月を決め、交換用バッテリの型番と一緒に予定表に書いておきます。あわせて、本体の自己診断(セルフテスト)の結果を見る日を半年に1回入れます。
  • 置き場所は、夏に高温になる窓際や、熱のこもる棚の中を避けます。バッテリの寿命は温度で縮みます。

5. 3つの給電方式

方式ふだんの動き停電時の切り替え出力波形メーカーが挙げる主な用途
常時商用給電商用電源をそのまま出力し、バッテリを充電しておく瞬断が起こる(一般的なOA機器ではほぼ問題にならないとされる)正弦波または矩形波(シリーズによる)パソコン、ハブ、ルーター、小型NAS
ラインインタラクティブ常時商用と同じ構造に、電圧の変動を補正する機能(AVR)を加えたもの常時商用と同じ基本構造のため、瞬断が起こる正弦波サーバー、ストレージ
常時インバータ給電常にインバータを通して出力し、同時に充電する。ノイズの除去と電圧の調整を常時行う切替時間が発生せず、無瞬断正弦波サーバー、ストレージ、産業機器

(オムロン「UPSの給電方式」「仕様項目の説明」による整理。方式の名称と分け方はメーカーにより異なり、富士電機は4方式、山洋電気は独自の方式を加えて説明しています。出力波形の欄は同社の製品シリーズでの例です)

選ぶ基準は「つなぐ機器が瞬断と波形をどこまで許容するか」と「設置場所の電圧が安定しているか」です。出力波形と機器の相性は、機器側の取扱説明書でも確認します。

私の選び方。 NASとルーターだけを載せる小さな事務所なら、常時商用給電(正弦波出力)で足ります。メーカー自身が小型NASを主な用途に挙げている方式です。電圧が不安定な建物(古いビル、工場と同じ系統、照明がよくちらつく)ならラインインタラクティブにします。常時インバータ給電は、止められないサーバや産業機器のための方式で、NAS1台の事務所には過剰です。価格も動作音も上がります。

UPSを買わない選択もあります。全員がノートPCで、ファイルはクラウドにあり、事務所にNASもサーバも無いなら、UPSは要りません。守る物が無いからです。

なお、UPSがあってもバックアップの代わりにはなりません。UPSが守るのは「電源が落ちる瞬間」だけです。

→ パソコンが壊れても翌日から仕事に戻れる。数台の事業のバックアップはこの3点

6. 確認表

#確認すること済
1UPSに載せる機器を絞った(NAS・ルーター類。PC本体・プリンターは載せない)□
23節の計算欄に、各機器の表示とW・VAを書き込んだ□
3余裕(1.2〜1.5倍)を掛けた値が、VA・Wの両方でUPSの出力容量に収まる□
4NASの終了にかかる時間を測り、その2倍以上のバックアップ時間が自分の負荷で確保できる□
5NASのメーカーの対応UPS一覧に、候補の機種がある(停電時に自動で終了できる)□
6つなぐ機器に合う給電方式と出力波形を選んだ□
7置き場所の温度を確認し、バッテリの交換月と型番を予定表に入れた□
8導入後、UPSのコンセントを抜いて、NASが自動で終了することを一度試した□

8を省く人が多いのですが、連動の設定は入れただけでは動いているか分かりません。試すのは、業務時間外に、NASのバックアップが取れている日にしてください。

出典(取得日: 2026-09-20)

UPSの部分は主にオムロン ソーシアルソリューションズの公開資料に沿い、山洋電気・富士電機の公開資料と照らし合わせました。「VAとWの両方で出力容量を下回らせる」「余裕を持たせる」という骨格は各社共通ですが、余裕の倍率、力率の仮定値、バックアップ時間の目安はメーカーにより異なります(本文の数値はオムロンの選定方法での値)。選ぶときは候補の製品のメーカーの資料で確認してください。JISの規格原文とは照合していません。音羽電機工業の資料は、分割した雷サージの記事の出典です。

この記事は特定の製品の使用レビューではありません。公式仕様と公的情報をもとに整理しています。 ・仕様の取得日