小さな事業のIT手帖

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判断・選び方

パソコンが壊れても翌日から仕事に戻れる。数台の事業のバックアップはこの3点

公開 更新 読了9分

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朝、パソコンの電源が入らない。中には今月の請求データと、作りかけの見積と、5年分の顧客とのやり取りが入っている。修理の見積は2週間後。このとき「昨日の状態に戻せる」と言えるかどうかで、その2週間が休業になるか、代わりのパソコンで翌日から仕事に戻れるかが分かれます。

パソコン数台の事業のバックアップは、パソコン本体+外付けディスク+クラウドの3点で足ります。高い機器は要りません。失敗の原因は機器ではなく、運用の3つの穴です。外付けを挿しっぱなしにする、クラウドの同期をバックアップだと思っている、一度も戻したことがない。この記事を読み終えると、自分の状況で3点を何に割り当てるかが決まり、最後の表で復元テストまで済ませられます。

先に結論:私が守っている決まり

  • 外付けディスクは、バックアップが終わったら外す。 挿しっぱなしのディスクは、ランサムウェアに本体と一緒に暗号化され、落雷で一緒に壊れます。
  • クラウドの同期フォルダをバックアップに数えない。 手元で消せば、向こうも消えます。数えてよいのは、過去の時点に戻れるものだけです。
  • 復元テストは年2回、日付を先に決める。 私は決算月と、その半年後にします。回数と時期は私の目安です。「そのうちやる」は、やりません。
目次(7)
  1. 1. 3-2-1の定義
  2. 2. 媒体ごとの特徴と、私の使い分け
  3. 3. 自分の事業に当てはめる
  4. 4. 確認表
  5. 5. 復元テストの手順(記入して使う)
  6. 6. この構成で足りない場合
  7. 出典(取得日: 2026-09-20)

1. 3-2-1の定義

「コピーを3つ、2種類の媒体に、1つは建物の外に」。米国のUS-CERT(現CISA)が、家庭の利用者から事業者まで共通の目安として公開している資料の定義です。

数字定義(US-CERT “Data Backup Options”)ねらい
3重要なファイルはコピーを3つ持つ。原本1つとバックアップ2つ1つ壊れても残りがある
22種類の異なる媒体に置く同じ種類の故障・災害で同時に失わない
11つは建物の外(自宅や事業所の外)に置く火災・水害・盗難で全部を失わない

IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」も、第4.0版で基本の対策に「バックアップを取ろう!」を加えました。

2. 媒体ごとの特徴と、私の使い分け

置き場所長所(同資料の整理)短所・注意(同)私の使い方
クラウド(遠隔地)災害や手元の機器の故障から切り離せる通信に依存する。データの管理を事業者に委ねるので、暗号化と契約内容を事前に確認する建物の外の1つはこれ。 自動で動き、人が運ばなくてよい
内蔵ディスク追加の機器が要らず、更新が速い原本と同じ故障・盗難・破損の影響を受ける原本の置き場所。バックアップには数えない
取り外せる媒体(外付けディスク等)パソコンから物理的に離せるので、オンラインの攻撃や過電流から守れる。自分で直接管理できる紛失・盗難に弱い。パスワード保護と暗号化をし、バックアップが終わったら外す手元の1つはこれ。 パソコンが壊れた日に、いちばん速く戻せる
書き換えできない光ディスク後から書き換わらず、壊れたファイルやマルウェアを引き継がない容量が小さい。最新の状態は入らない日常のバックアップには使わない。年度末の確定データの保管なら可

同資料が繰り返し注意しているのが、「上書きしていく方式のバックアップは、原本の破損やマルウェアをそのままバックアップに広げることがある」点です。だから世代管理(過去の状態に戻れる設定)があるものを選びます。壊れたファイルに気づくのは、たいてい壊れてから数日後です。昨日の1世代しか無いバックアップには、壊れた後のファイルしか入っていません。

「クラウドに入れているから大丈夫」について

よくあるのは、クラウドストレージの同期フォルダで仕事をしていて、それをバックアップだと思っている形です。同期は「手元と向こうを同じ状態にする」機能なので、消せば消え、暗号化されれば暗号化された版が上がります。多くのサービスにごみ箱や版の履歴がありますが、保存期間に限りがあります。年に1回しか開かないファイルが消えていたことに気づくころには、期間を過ぎています。

同期は「原本の置き場所がクラウドになった」だけで、コピーは増えていません。 私はそう数えます。クラウドの会計ソフトも同じで、「そのサービスの中にしかないデータ」は原本1つの状態です。書き出し(エクスポート)の機能を公式ヘルプで確かめ、決算ごとに書き出しておきます。

3. 自分の事業に当てはめる

手順1:守る対象を書き出す

種類例失うと困る度合い
作り直せないもの請求・会計のデータ、契約書、顧客とのやり取り、写真・制作物高
手間はかかるが戻せるもの設定、テンプレート、パスワード管理ソフトの保管庫中
再インストールで戻るものOS、アプリ本体低

迷ったら、私はパソコンを丸ごと取ります。ファイルを選んで取る方式は、選び忘れたフォルダ(デスクトップ、メールソフトのデータ、会計ソフトの保存先)が、壊れた日に見つかります。

手順2:状況に近い行から、3点に割り当てる

状況原本バックアップ1(手元)バックアップ2(建物の外)
パソコン1台。データは内蔵ディスクに収まる内蔵ディスク外付けディスク(OS標準のバックアップ機能で可。例: macOSのTime Machineは外付けストレージへ自動でバックアップする)クラウドのバックアップまたはストレージ
パソコン2〜5台。共有したいファイルがある各自のパソコン、または共有の置き場所1か所台ごとの外付けディスク、または共有の置き場所をまとめて取る外付けディスク同上。全台を対象にできるかを確認する
写真・動画などでデータ量が大きい内蔵または外付けの作業用ディスク作業用とは別の外付けディスククラウドに全部を上げるのが回線の面で難しければ、もう1台の外付けディスクを別の建物に置き、定期的に入れ替える
仕事のデータがほぼクラウドのサービス内にあるそのサービス書き出し(エクスポート)したファイルを手元のパソコンに手元のパソコンのバックアップ先(別のクラウドや外付け)

3行目で作業用も外付けディスクの場合、3つとも同じ種類の媒体になり、定義の「2種類の媒体」を満たしません。原本を内蔵ディスクに置くか、一部だけでもクラウドに置いて種類を分けます。

共有の置き場所を1か所にまとめた場合、それ自体は「原本」です。NASを置いた会社が「NASに入れているから大丈夫」と考えるのも、同じ数え間違いです。→ RAIDはバックアップではない

建物の外の1つに、私が勧めるのはクラウドの「バックアップ」サービスです。 同期型のストレージとの違いは、世代が残ること、パソコン丸ごとを対象にできること、手元で消しても向こうが消えないこと。同期型のストレージで代用するなら、版の履歴の保存期間を確かめ、その期間より古い誤削除は戻せないと割り切ってください。

手順3:頻度と、外す運用を決める

規格に頻度の定めはありません。ここからは私の目安です。

決めること私の目安
クラウドのバックアップ毎日、自動で。人の手を入れない
外付けディスク週1回、曜日を決めてつなぎ、終わったら外して引き出しへ。金曜の終業前が続きやすい
考え方「失っても作り直せる作業量」から逆算する。1日分が限度なら毎日。週1回の外付けだけでは最大1週間分を失うので、毎日のクラウドと組み合わせる
持ち運ぶ媒体暗号化する。暗号化しないディスクを鞄に入れるのは、顧客名簿を鞄に入れるのと同じ

「つないで外す」が続かないことは分かっています。だから自動で動くクラウドを主にし、外付けは「速く戻すための2番手」と位置づけます。外付けが1か月止まっても、クラウドが動いていればデータは失いません。逆の組み方は勧めません。

4. 確認表

#確認すること済
1作り直せないデータの一覧がある□
2コピーが3つある(原本+2。同期フォルダは数えない)□
3媒体が2種類以上ある□
41つは建物の外にある(クラウドまたは別の場所に保管)□
5外付け媒体は取り終えたら外している□
6外付け媒体とクラウドのデータが暗号化されている□
7上書き1世代だけでなく、過去の状態に戻れる□
8クラウドサービス内にしかないデータの書き出し方法を確認した□
9ファイルを1つ選んで、実際に戻せた(日付を記録)□
10クラウドのアカウントに2要素認証を設定した□
11次の復元テストの日付がカレンダーに入っている□

5. 復元テストの手順(記入して使う)

戻したことのないバックアップは、まだ「取れているはず」の段階です。よくあるのは、壊れた日に初めて戻そうとして、バックアップが半年前に止まっていた、暗号化のパスワードが壊れたパソコンの中にしか無かった、のどちらかです。どちらも、10分のテストで先に見つかります。

  1. 作り直せないデータの中から、ファイルを1つ選ぶ(できれば数日前に更新したもの)。
  2. バックアップ先から、元の場所とは別のフォルダへ復元する(原本を上書きしないため)。
  3. 復元したファイルを開き、中身と更新日が想定どおりかを見る。
  4. 世代管理がある場合は、1つ前の状態も取り出せるかを試す。
  5. かかった時間と、つまずいた点(パスワードの所在、手順の分かりにくさ)を書き残す。
バックアップ先試した日選んだファイル開けたか前の世代も戻せたかかかった時間・メモ
外付けディスクはい/いいえはい/いいえ/対象外
クラウドはい/いいえはい/いいえ/対象外

「いいえ」が出たら、3節の手順2に戻って構成を見直します。暗号化したバックアップは、復号のパスワードが手元のパソコン以外の場所にも控えてあるかを、このときに確かめます。

→ パスワード管理と2要素認証の進め方

6. この構成で足りない場合

顧客の個人情報や健康情報など機微なデータを大量に扱う場合は、保管場所と暗号化の要件が変わります。同資料も、機微なデータは保護の必要性を先に評価するよう求めています。業界のガイドラインや契約上の取り決めを優先してください。

出典(取得日: 2026-09-20)

この記事は特定の製品の使用レビューではありません。公式仕様と公的情報をもとに整理しています。 ・仕様の取得日