小さな事業のIT手帖

技術メモ担当者・業者向けの記事です。社長向けの入口は トップの困りごと です。

手順

自社のドメインなのに名義が制作会社だった。関係を壊さず取り戻す段取り

公開 更新 読了9分

中身の図の縮小版。色が付いているのは: 契約の持ち主(契約の名義とログイン情報)、会社の名前(ドメイン)契約の名義とログイン情報ドメインDNSサイトメールアカウントファイルバックアップ電源・機器回線端末ソフトホームページとメール・パソコンの中身の図の、ここの話です契約の持ち主(契約の名義とログイン情報)/会社の名前(ドメイン)中身の図で位置を見る →

制作会社を替えようとした、あるいは更新の請求書を見て気になった。自社のドメインを検索してみたら、登録者の欄に制作会社の名前がある。そういう人へ。

珍しいことではありません。取得の手間を省くために、制作会社が自社のアカウントでまとめて登録するのはよくある形で、悪意があることはまれです。ただしこのままにしておくのは勧めません。 読み終えると、頼む前に自分で確かめておくこと、手続きの順番、制作会社へ送る依頼文が手に入ります。

この記事で出来ること
名義と管理のどちらを移すかを決め、制作会社へ依頼文を送り、返事が無いときの催促まで出せる
前提
制作会社と連絡が取れること。取れないなら「制作会社と連絡が取れなくなった」の記事へ
所要時間
確認は30分。名義変更は相手の対応しだいで数日〜数週間、事業者間の移管はその60日後

先に結論:私ならこう進めます

  1. 連絡する前に、いまの登録情報の画面を保存する。
  2. 保守契約は続ける前提で、「名義と管理だけ自社へ」と頼む。 解約の話と一緒にしない。
  3. 先に名義変更、移管は60日たってから。 急いで両方を一度にやらない。
  4. DNSには触らない。 名義と管理を動かしても、ネームサーバーを変えなければサイトもメールも止まりません。

放置を勧めない理由は、困るのが必ず「関係が切れた後」だからです。よくあるのは、制作会社の担当者が退職した、会社が廃業した、保守契約を打ち切った、のいずれかの後に更新の通知が誰にも読まれなくなり、ある朝サイトとメールが同時に消える形です。そのとき復旧の手続きができるのは、名義人と管理画面の持ち主だけです。

目次(9)
  1. 1. 連絡の前に、自分で確かめる
  2. 2. 要る手続きを決める
  3. 3. 順番:先に名義、移管は60日後
  4. 4. 依頼文の型
  5. 5. 戻し方:取り返しのつかない操作はどれか
  6. 6. 社長への報告の型(3行)
  7. 7. 手続きの間に気をつけること
  8. 8. 確認表
  9. 出典(取得日: 2026-09-20)

1. 連絡の前に、自分で確かめる

確かめること確かめ方分かったこと(記入)
管理している事業者ブラウザで調べられる。gTLD(.com や .net など)はICANNの登録データ検索(lookup.icann.org)、.jp は JPRS WHOIS で、Registrar/指定事業者の欄を見る
登録者の表示同じ検索結果の Registrant/登録者名の欄
有効期限同じ検索結果の期限の欄
ネームサーバー同じ検索結果の Name Server の欄。dig +short example.com NS でも分かる
契約書・発注書・請求書でのドメインの扱い手元の書類。「取得代行」か「貸与」か、ドメイン費用の請求の有無
管理画面にログインできるのは誰かこれだけは制作会社に尋ねる

検索結果の画面は、日付が分かる形で保存してください。 揉める前提ではありません。話が長引いたときに「いつの時点でどうなっていたか」を自分の側で示せるようにしておく、というだけです。ドメイン費用を自社が払ってきたことが分かる請求書も、一緒にまとめておきます。

検索結果の登録者の欄は、実際の登録者を示しているとは限りません。gTLDでは登録者の情報が非表示になっていたり、代理公開のサービスの名前が出ていたりします。その場合は、管理画面の登録者情報の画面を制作会社に見せてもらうのが確実です。

→ 登録情報として何が公開されるか

2. 要る手続きを決める

登録者(名義)管理画面のアカウント要る手続き
自社自社なし。8節の確認表で連絡先だけ見直す
自社制作会社B. 管理の引き取りだけ。名義変更は要らない
制作会社制作会社A. 名義変更と、B. 管理の引き取り
分からない制作会社1節の表を埋めてから、もう一度この表へ
A. 名義を替えるB. 管理する事業者・アカウントを替える
gTLDでの呼び方登録者の変更(Change of Registrant)移管(事業者間の移動)、または同じ事業者の中でのアカウント間の移動
.jp での呼び方移転(登録者を別の人・組織に替える)指定事業者変更
替わるもの登録者(手続きの当事者になる人・組織)更新の支払い先、管理画面
替わらないもの事業者、ネームサーバー登録者
窓口いま管理している事業者gTLDは移管先の事業者に申し込む。.jp は変更先の指定事業者に希望を伝える

どちらの手続きも、いまの登録者の同意・協力が要ります。 だから頼み方が段取りの中心になります。

3. 順番:先に名義、移管は60日後

gTLDの名義変更について、ICANNの移管ポリシー(II章)は次のように定めています。

  • 登録者の名前、組織名、メールアドレスの変更が「登録者の変更」にあたります。誤字の訂正は除かれます。
  • 事業者は、新しい登録者と、それまでの登録者の両方から、確実な方法で同意を得ます。
  • 変更の後、事業者は60日間、他の事業者への移管を止めます。事業者が、変更の前にこのロックを辞退できる選択肢を用意していることがあります。

このポリシーは改定の手続きが進んでいます。手続きの前に、ICANNのページの最新版と事業者の公式ヘルプを確認してください。

私なら、先に名義を替え、60日のロックはそのまま受け入れます。 理由は、守りたいものの順番です。名義さえ自社になれば、その後に制作会社と連絡が取れなくなっても、自社が登録者として事業者に手続きを求められます。管理画面の引き取りは、その後でゆっくりやれば足ります。逆の順(先に移管)は、移管の確認が届く先が制作会社のままなので、結局は同じだけ協力が要り、しかも名義が後回しになります。

いちばん手間が少ないのは、同じ事業者の中で、自社のアカウントを作ってそこへ移してもらう方法です。事業者間の移管にあたらないので60日の話が出ず、DNSもそのままです。この機能があるか、名義変更を同時にできるかは事業者によって違うので、公式ヘルプで先に確かめます。別の事業者へ移りたければ、落ち着いてから自分の都合でやれます。

→ 移管でメールを止めない段取り

.jp では、申請はすべて指定事業者を通じて行います。JPRSに直接申請することはできません。登録者を替えるときは「移転申請」、指定事業者を替えるときは変更先の事業者に希望を伝えて手続きを確認します。

4. 依頼文の型

電話より、記録の残るメールで送ります。要点は3つ。保守は続けたいと先に言う、理由を「社内の管理の決まり」にする、相手の手間を最小にする。

件名:ドメイン(example.com)の登録名義と管理の移行のお願い

○○様

いつもお世話になっております。

社内でIT資産の管理を見直しており、ドメインの登録者名義と
管理アカウントを当社に統一することになりました。
サイトの保守は、これまでどおり貴社にお願いしたく存じます。

つきましては、下記にご協力をお願いできますでしょうか。

1. example.com の登録者を当社(正式名称:     )へ変更
2. 当社のアカウント(登録事業者:     /ID:     )への移動
   ※同じ事業者の中での移動が可能であれば、その方法を希望します
3. 現在のDNSレコードの一覧のご提供(設定は変更しません)

ネームサーバーとDNSの設定は現状のままとし、
サイトとメールに影響が出ない形で進めたいと考えております。
作業に費用が発生する場合は、事前にお見積もりをお知らせください。

有効期限(    年  月  日)までに余裕をもって完了できるよう、
ご都合のよい時期をお知らせいただけますと幸いです。

言わないほうがよいのは「名義を勝手に御社にされていた」という言い方です。事実でも、相手の協力が要る手続きを遅くするだけです。

空欄は送る前に自分で埋めます。登録事業者の名前と有効期限は1節の表から写し、自社のアカウントは先に作ってIDを書き込みます。相手に調べさせる項目が残っていると、その分だけ返事が遅くなります。

1週間たっても返事が無ければ、同じメールに返信する形で、1回だけ催促します。

○○様

先日お送りした example.com の名義と管理の件、その後いかがでしょうか。
有効期限が    年  月  日のため、  月  日までに進め方だけでもお知らせください。
お手間であれば、当社で登録事業者に手続きを確認し、
貴社にお願いする作業を最小限に整理してお送りします。

私なら、催促は1回にとどめ、2回目は電話にします。 文面を重ねるほど責める調子になり、相手が構えるからです。それでも通じなくなったら、場面が変わっています。

→ 制作会社と連絡が取れなくなった。自社に取り戻す順番

受け取る側の準備として、自社のアカウントの登録者メールアドレスは、担当者個人のものではなく、担当が替わっても読めるアドレスにします。そのドメイン自身のアドレスだけにするのも避けます。ドメインが止まると通知も読めなくなるからです。

5. 戻し方:取り返しのつかない操作はどれか

操作戻せるか
登録情報を検索する、画面を保存する、依頼文を送る何も変わらない
同じ事業者の中でアカウントを移す戻すには相手のアカウントへ移し直す。DNSは変わらないので、サイトとメールには影響しない
登録者(名義)を替える戻すにも新旧両方の同意が要り、gTLDでは60日のロックがかかる。誤字の訂正はポリシー上「登録者の変更」から除かれるが、どこまでを訂正として扱うかは事業者の運用しだい。正式名称とメールアドレスは、確定の前に声に出して読む
ネームサーバーを替える戻せるが、その間サイトとメールが止まりうる。この手続きでは触らない
保守契約を解約する名義と管理が自社に移り、DNSレコードの一覧を受け取るまで、しない

間違いに気づいたら、自分で直そうとせず、まず事業者のサポートに「登録者の変更を申請したが、内容に誤りがある」と伝えます。申請がどの段階にあるかで、出来ることが変わるからです。

6. 社長への報告の型(3行)

1. 現状:当社のドメインの登録名義が(制作会社名)になっています。今は問題なく動いていますが、先方と連絡が取れなくなると更新も復旧も当社ではできません。
2. 進め方:保守契約は続けたまま、名義と管理アカウントだけを当社へ移すよう依頼します。サイトとメールは止まりません。
3. お願い:会社の正式名称での登録と、更新費用の当社カードでの支払い(年  円)をご承認ください。

7. 手続きの間に気をつけること

  • 有効期限。 期限が近ければ、先に更新を済ませてもらってから始めます。
  • DNSの置き場所。 ネームサーバーが制作会社のサーバに付属するDNSなら、管理を移してもレコードはそこに残ります。将来サーバごと替える日のために、レコードの一覧だけはこの機会にもらっておきます。
  • 完了の確認。 検索結果と管理画面の両方で、登録者・連絡先・期限を確かめ、自動更新と2要素認証を設定します。

返事が来ない、応じてもらえない、高額の費用を求められた、という場合の扱いは契約の内容によります。ここから先は法律の話で、この記事の範囲を超えます。1節で保存した画面と書類一式を持って、弁護士などの専門家に相談してください。期限が迫っているなら、その日付を最初に伝えます。

→ サーバ・ドメイン・メールの引っ越しの順番

8. 確認表

#確認すること済
1登録者(名義)と、管理している事業者を、別々に確かめた□
2検索結果の画面と、ドメイン費用の請求書を、日付つきで保存した□
3契約書・発注書でのドメインの扱いを確かめた□
4要る手続きがA・Bのどれかを決めた□
5同じ事業者の中でアカウント間の移動ができるかを公式ヘルプで確かめた□
6名義変更を先に、移管は60日のロックを踏まえて後に、と順番を決めた(gTLD)□
7登録者のメールアドレスを、担当が替わっても読めるアドレスにした□
8DNSレコードの一覧を受け取った。ネームサーバーは変えていない□
9手続きの間に有効期限が来ないことを確かめた□
10完了後、登録者・連絡先・期限・自動更新・2要素認証を確かめた□

期限がすでに切れている場合は、名義の話より先に復旧です。

→ ドメインの更新を忘れてサイトとメールが消えたとき

出典(取得日: 2026-09-20)

進める順番と依頼文は、規則の定めではなく筆者の実務上の考えです。

この記事は特定の製品の使用レビューではありません。公式仕様と公的情報をもとに整理しています。 ・仕様の取得日

次にやること