結論
- 引っ越しの対象は「Webサーバ」「メール」「DNS(ネームサーバー)」「ドメインの登録先」の4つです。同じ日に全部を動かさず、1つずつ動かして確認するのが基本です。
- 順番は ①現状の書き出し → ②TTLを下げる → ③新しい側を先に完成させる → ④DNSを切り替える → ⑤新旧を並行で動かす → ⑥旧側を止める → ⑦ドメインの移管(必要な場合だけ、最後に) です。
- DNSの切り替えは、レコードを元の値に戻せば切り戻せます。戻せる状態を保つために、旧サーバは並行期間が終わるまで解約しません。
1. 動かすものは4つある
| 対象 | 内容 | 動かすと変わるDNSの項目 |
|---|---|---|
| Webサーバ | サイトのファイルやデータベースの置き場所 | A / AAAA / CNAME |
| メール | メールボックスと送受信のサーバ | MX、SPFのTXT、DKIMのTXT |
| DNS(ネームサーバー) | 上のレコードを答えるサーバ | NS(ドメインの登録先の管理画面で指定) |
| ドメインの登録先 | ドメインの契約と更新を扱う事業者 | 変わらない(ネームサーバーの指定が同じなら、DNSの内容は同じ) |
「サーバを替える」と「ドメインを移管する」は別の作業です。サーバだけ替えて、ドメインの登録先はそのままにしておくこともできます。
2. 全体の順番
① 現状を書き出す
いまのDNSレコードをすべて控えます。管理画面の一覧を写すほか、dig でも確認できます(example.com は例です)。
dig +noall +answer example.com A
dig +noall +answer example.com MX
dig +noall +answer example.com TXT
dig +noall +answer example.com NS
メールアドレスの一覧、転送設定、サブドメイン、フォームの自動返信など「このドメインでメールを送っているサービス」も書き出します。
② TTLを先に下げる
TTLは、DNSの答えをキャッシュしてよい秒数です(RFC 1035)。TTLが86400(1日)のレコードを書き換えると、古い答えを覚えているリゾルバが最大で1日残ります。
- 切り替える予定のレコード(A、MXなど)のTTLを、短い値に変えます。
- 変える時期は、「いまのTTLの長さ」以上前です。TTLが1日なら、切り替えの1日以上前に下げます。下げた直後は、まだ古いTTLで覚えているリゾルバがいるためです。
- 同じ名前・同じ種類のレコードが複数あるとき(MXが2行など)は、TTLをそろえます(RFC 2181 5.2節)。
- 切り替えが落ち着いたら、TTLを元の長さに戻します。
③ 新しい側を先に完成させる
DNSを切り替える前に、新しい側で次を済ませます。
- サイトのファイルとデータを移し、新サーバ上で表示を確認する
- メールアドレスを旧側と同じ名前で新側に作る(切り替え後に届くメールの受け皿を先に用意する)
- 新しいメールサービスが指定するSPF・DKIMの値を控える
④ DNSを切り替える
方法は2つあります。
| 方法 | 内容 | 注意する点 |
|---|---|---|
| レコードだけ書き換える | いまのネームサーバーのまま、AやMXの値を新しい側に変える | 変える範囲が小さく、1行ずつ確認できる |
| ネームサーバーごと替える | 新しい事業者のDNSに全レコードを作ってから、NSの指定を変える | 新側のDNSに、①で控えたレコードがすべて入っているかを先に確かめる。MXやTXTの写し忘れがメール不達の原因になる |
切り替え後にメールが届かないときの確認順は、別の記事にまとめました。
⑤ 新旧を並行で動かす
切り替え後もしばらく、古い答えを覚えているリゾルバは旧サーバへ届けます。
- 旧側のメールボックスは残し、並行期間中は旧側の受信も確認します。
- メールソフトに新旧の両方のアカウントを設定しておくと、どちらに届いても読めます。
- 旧側のメールボックスを先に消すと、そこへ届いたメールを受け取れなくなります。
送信側のメールサーバは、一時的に届けられないメールをすぐには諦めず、再送を続けます。RFC 5321は、諦めるまでの時間を少なくとも4〜5日とするよう述べています(4.5.4.1節)。短時間の切り替え作業でメールが失われにくいのはこのためです。
⑥ 旧側を止める
数日のあいだ旧側に新しいメールもアクセスも来ないことを確かめてから、旧メールボックスの中身を保存し、解約します。
⑦ ドメインの移管は最後に、必要なときだけ
移管を同じ時期に重ねると、①〜⑥と問題が重なって原因が追いにくくなります。サーバとメールが落ち着いてから、別の日に行います。
3. 切り戻しの備え
| 備え | 内容 |
|---|---|
| 旧レコードの控え | ①の書き出しを、切り替え前の値として保存しておく |
| 短いTTL | ②で下げてあれば、戻したときも短い時間で反映される |
| 旧サーバの契約 | 並行期間が終わるまで解約しない。更新日が近いときは先に確認する |
| 作業の時間帯 | メールや問い合わせの少ない時間に切り替える |
| 管理画面に入れること | 新旧の事業者とドメイン登録先の3か所に、作業前にログインして確かめる |
4. 確認表
| # | 確認すること | 方法 | 済 |
|---|---|---|---|
| 1 | 全レコードを控えた | 管理画面の一覧と dig の結果を保存 | □ |
| 2 | TTLを下げてから、元のTTL以上の時間がたった | 変更した日時を記録 | □ |
| 3 | 新側に同じメールアドレスがある | 新側の管理画面で一覧を照合 | □ |
| 4 | 新側のDNSにMX・SPF・DKIM・DMARCがある | dig @新ネームサーバー example.com MX など | □ |
| 5 | 切り替え後、外から新旧どちらの答えが返るか | dig +short example.com MX を複数の回線で | □ |
| 6 | 送受信のテスト | 外部のアドレスとの間で送受信し、ヘッダーのSPF・DKIMの結果を見る | □ |
| 7 | 旧側に数日新着がない | 旧メールボックスと旧サーバのアクセス記録 | □ |
| 8 | TTLを元に戻した | 管理画面 | □ |
出典(取得日: 2026-09-20)
- RFC 1035 Domain Names - Implementation and Specification(TTLの定義) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc1035.html
- RFC 2181 Clarifications to the DNS Specification(5.2節、8節) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc2181.html
- RFC 5321 Simple Mail Transfer Protocol(4.5.4.1節、5.1節) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5321.html