結論
- 移管は「ドメインの契約先(登録事業者)を替える手続き」、ネームサーバー変更は「DNSの答えを返すサーバを替える設定」です。別の作業で、片方だけ行うこともできます。
- 移管そのものはDNSのレコードを書き換えません。メールが止まるのは、いまのDNSが移管元の事業者のサービスで、移管に伴ってそのDNSが使えなくなる場合です。
- 止めない段取りは、①DNSの置き場所を先に決めて動かす → ②落ち着いてから移管する の順です。2つを同じ日に重ねません。
1. 移管とネームサーバー変更の違い
| 移管 | ネームサーバー変更 | |
|---|---|---|
| 替わるもの | 契約先の事業者(更新の手続きをする相手) | DNSの答えを返すサーバ |
| 手続きの場所 | 移管先で申し込み、移管元で準備する | いまの契約先の管理画面 |
| かかる時間 | 数日(2節) | 設定はすぐ。行き渡るまではTTLしだい |
| メールへの影響 | DNSの置き場所が変わらなければ、ない | 新しいDNSにMXなどが無ければ届かなくなる |
2. gTLD(.com など)の移管の決まり
.com や .net などのgTLDは、ICANNの Transfer Policy に沿って移管されます。要点は次のとおりです(節番号は、2024年2月21日に更新され、2025年8月21日までに各事業者が実施することとされた版のもの)。
| 項目 | 内容 | 節 |
|---|---|---|
| 移管ロック | 管理画面の「移管ロック」は、レジストリ上の clientTransferProhibited という状態。付いている間は移管できない | I.A.5 |
| 認証コード(AuthInfoコード) | 移管先で入力する、ドメインごとのコード。登録者が自分でコードの取得やロックの解除をできる機能を事業者が用意していない場合、事業者は求めから5暦日以内にコードを渡し、ロックを外す | I.A.5.2 |
| 60日の制限 | 事業者は、登録から60日以内、前回の移管から60日以内の移管を拒否できる | I.A.3.7.5、3.7.6 |
| 登録者情報の変更後 | 登録者の名前・組織・メールアドレスを変えると、60日間の移管ロックがかかる。事業者が、変更の前にロックを辞退する選択肢を用意している場合がある | II.C.2 |
| 移管元の応答 | 移管元が5暦日以内に応答しなければ、承認されたものとして進む | I.A.3.5 |
| 登録期間 | 移管が完了すると登録期間が1年延びる(残りの合計は10年まで) | I.A.8 |
このポリシーは改定の手続きが進行中です。GNSOの作業部会は、60日の制限を30日に短くすることや、認証コードの呼び方を「TAC(Transfer Authorization Code)」に改めることなどを勧告し、GNSO評議会が2025年3月に最終報告書を採択しました。ただし、新しい版の適用日は、この記事の取得日の時点でICANNのページでは確認できませんでした。上の表は現行版の内容です。手続きの前に、上のページの最新版と、移管元・移管先の公式ヘルプを確認してください。
手続きの前に見る点
- 登録者のメールアドレスに届くこと。 移管の確認や通知はそのアドレスに届きます。ただし、直前に変えると上の60日ロックの対象になりえます。
- 有効期限。 期限が近いときは、先に移管元で更新してから日程を決めます。
- WHOISの代理公開。 移管の前に解除が必要かどうかは事業者によって違います。
→ ドメインをどこで取るか: 自宅住所を出さないための確認表
3. .jp の場合(指定事業者変更)
.jp では、契約先を替える手続きを「指定事業者変更」と呼びます。JPRSの案内の要点です。
- 登録者が、いまの指定事業者を通じて**認証コード(AuthCode)**を受け取り、新しい指定事業者に申し込みます。そのあと、いまの指定事業者からの確認に、登録者が「承認」を回答すると完了します。
- 指定事業者がAuthCodeに対応していない場合は、AuthCodeなしの手順になります。
- AuthCodeはJPRSがドメイン名ごとに発行し、有効期間は35日です。切れたら最初からやり直します。
- 指定事業者変更ロックやレジストリロックを付けている場合は、先に外します。
- かかる日数は指定事業者によって違うので、両方の公式ヘルプで確かめます。
- .jp でいう「ドメイン名移転」は、登録者を別の人・組織に替える手続きのことで、事業者を替える手続きとは別です。言葉が似ているので、申し込みの画面で取り違えないようにします。
- 属性型・地域型JP(co.jp など)では、変更後の指定事業者で担当者情報を新しく用意する必要があります。
4. メールが止まる場面
| 場面 | なぜ止まるか | 先にしておくこと |
|---|---|---|
| 移管元の事業者のDNSを使っている | 移管後にそのDNSを使い続けられるかは事業者による。使えなくなると、MXを含む全レコードが答えられなくなる | 移管元の公式ヘルプで確認する。使えなくなるなら、移管の前にDNSを別の場所へ移す |
| 移管の申し込みで、ネームサーバーを移管先の標準のものに替える選択をした | 移管先のDNSにレコードが無い状態で切り替わる | 申し込み画面で「いまのネームサーバーを引き継ぐ」かどうかを確かめる |
| 移管元のメール転送・メールボックスを使っている | ドメインの契約に付属するサービスは、移管で終了することがある | 移管の前に、メールを別のサービスへ移す |
| 有効期限が切れた | ドメイン自体が使えなくなる | 期限に余裕のある時期に行う |
DNSとメールの置き場所が移管元と無関係(別の事業者のDNSとメールサービス)で、ネームサーバーの指定を変えなければ、移管の前後でDNSの答えは変わりません。
送信側のメールサーバは、一時的に届かないメールを少なくとも4〜5日は再送し続けることが推奨されています(RFC 5321 4.5.4.1節)。短時間の不通であれば、あとから届く場合があります。
5. 止めない段取り
- いまのネームサーバーがどの事業者のものかを確かめる(
dig +short example.com NS) - それが移管元のサービスなら、移管後も使えるかを公式ヘルプで確認する
- 使えないなら、先にDNSを移す(全レコードを写す → TTLを下げる → ネームサーバーを替える → 送受信を確認する)
- 数日おいて、メールとサイトが安定していることを確かめる
- 移管ロックを外し、認証コードを受け取る
- 移管先で申し込む。ネームサーバーはいまの指定を引き継ぐ
- 完了後、
dig +short example.com NSとMXが手続き前と同じであることを確かめ、移管ロックをかけ直す
6. 確認表
| # | 確認すること | 済 |
|---|---|---|
| 1 | 登録・前回の移管・登録者情報の変更から60日を過ぎている(gTLD) | □ |
| 2 | 有効期限に余裕がある | □ |
| 3 | 登録者のメールアドレスで受信できる | □ |
| 4 | いまのDNSとメールが、移管元の付属サービスかどうかを把握した | □ |
| 5 | 付属サービスなら、DNS・メールを先に移し、数日の安定を確かめた | □ |
| 6 | DNSの全レコードを控えた | □ |
| 7 | 移管ロックを外し、認証コードを受け取った(.jp は有効期間35日) | □ |
| 8 | 申し込みで、ネームサーバーを引き継ぐ設定にした | □ |
| 9 | 完了後、NSとMXの答えが変わっていない | □ |
| 10 | 移管ロックと、管理画面の2要素認証を設定した | □ |
出典(取得日: 2026-09-20)
- ICANN Transfer Policy(2024年2月21日更新版) https://www.icann.org/resources/pages/transfer-policy-2024-02-21-en
- GNSO Transfer Policy Review(改定作業の状況) https://gnso.icann.org/en/group-activities/active/transfer-policy-review
- JPRS「ドメイン名の管理指定事業者の変更」 https://jprs.jp/about/dom-rule/agent-change/index.html
- RFC 5321 Simple Mail Transfer Protocol(4.5.4.1節) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5321.html