結論
- 権限は 個人に直接付けず、グループに付けます。人の出入りのたびに触るのは「グループの名簿」だけにして、フォルダ側の設定は触らない形にします。
- グループは「部署」と「役割(編集する人/見るだけの人)」の組み合わせで作ります。10〜50人の会社なら、表1枚に収まります。
- 権限を変える場所は 上から2階層までに限ります。深い階層やファイル単位の例外が増えるほど、「誰が何を見られるか」を誰も説明できなくなります。
- 社内のファイルサーバ(NTFS)とクラウドストレージでは、権限の単位と「ファイルの持ち主」の考え方が違います。移行のときは設定を写すのではなく、同じ表から付け直します。
1. なぜ個人に直接付けないのか
個人に直接付けた権限は、その人が異動・退職したときに「どのフォルダに付いていたか」を全部探して外す必要があります。探し漏れた分は、使われないまま残ります。グループに付けておけば、名簿から1人外すだけで、その人の権限はすべてのフォルダから同時に外れます。
公式の資料も同じ方向です。Microsoftは、SharePointのチームのサイトの権限は、関連づいたMicrosoft 365 グループ(Teamsと一緒に使うサイトはTeams)を通して管理することを勧めています。Google ドライブの共有ドライブも、メンバーとして個人だけでなくグループを追加できます。
失敗しやすいのは、急ぎの依頼に応えて「この人にだけ、このフォルダを」と個人に付ける場面です。断るのではなく、その依頼に合うグループを作るか、既存のグループに入れる、と決めておくと例外が積み上がりません。
2. 部署×役割の表を作る(記入して使う)
手順は3つです。
- 共有の単位(一番上のフォルダ)を決める。部署ごと、全社共通、経営・人事など見せる範囲が狭いもの、に分ける。
- グループを決める。部署ごとに「編集」「閲覧」の2つまでを目安にする。
- 下の表の交点に、◎(編集)・○(閲覧)・空欄(権限なし)を入れる。
記入例(部署名とグループ名は例です):
| 共有の単位 \ グループ | 営業-編集 | 営業-閲覧 | 経理-編集 | 総務-編集 | 役員 | 全社員 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 01_全社共通(規程・様式) | ◎ | ○ | ○ | |||
| 02_営業 | ◎ | ○ | ○ | |||
| 03_経理 | ◎ | ○ | ||||
| 04_人事・労務 | ◎ | ○ | ||||
| 05_経営 | ◎ | |||||
| 90_外部との受け渡し | ◎ | ◎ | ◎ |
表を作るときの判断の理由:
| 決めごと | 理由 |
|---|---|
| 空欄=権限なし、を基本にする | 「見せない」を後から足すより、「見せる」を足すほうが事故が小さい |
| 「全社員」グループに編集を与えない | 誤って消す・上書きする範囲が全社に広がる |
| 外部との受け渡しは専用の単位に分ける | 社外と共有する設定を、社内用の場所に持ち込まないため |
| 管理者(権限を変えられる人)は2人にする | 1人だと不在・退職で誰も変えられなくなる。多すぎると誰が変えたか追えない |
| 表そのものを、全社員が見られる場所に置く | 「なぜ自分は開けないのか」の問い合わせが減る |
3. 例外を増やさないための線引き
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 部署のフォルダの中に、一部の人だけに見せたいものがある | 深い階層で権限を変えず、一番上に別の共有の単位を作って移す |
| 1つの案件に複数の部署が関わる | 案件用の共有の単位とグループを作り、終わったら閲覧のみにして保管用へ |
| 個人の作業用の置き場所が欲しい | 共有フォルダの中に個人名のフォルダを作らず、各自の個人用の領域を使う。ただし業務の成果物は共有の単位に置く決まりにする |
| 一時的に他部署の人に見せたい | 期限を決めてグループに入れ、外す日を管理表に書く |
個別の権限を増やさないのは、管理の手間だけが理由ではありません。Microsoft 365では、1つのライブラリの中で個別に権限を持てる項目の上限が5万件、推奨は5,000件までとされています。製品の側にも、個別の権限を積み上げる使い方には限度があるということです。
4. 社内のファイルサーバとクラウドで違う点
| 観点 | Windowsのファイルサーバ(NTFS) | SharePoint・OneDrive(Microsoft 365) | Google ドライブの共有ドライブ |
|---|---|---|---|
| 権限がかかる場所 | 共有のアクセス許可とNTFSのアクセス許可の2段。Microsoftの資料では、両方を使うと より制限の厳しいほうが適用される | サイト(とその中のライブラリ)。サイトの所有者・メンバー・閲覧者のグループが基本 | 共有ドライブごとのメンバーとアクセスレベル |
| 役割の種類 | 読み取り、変更、フルコントロールなどを細かく組み合わせられる | 所有者・メンバー・閲覧者。Microsoft 365 グループには閲覧のみの区分が無く、閲覧だけの人はサイトの閲覧者グループに直接入れる | 管理者・コンテンツ管理者・投稿者・閲覧者(コメント可)・閲覧者の5段階 |
| 下の階層への伝わり方 | Microsoftの資料では、フォルダの中のファイルは、そのフォルダの権限のうち「継承する」とされたものを自動で引き継ぐ | Microsoftの資料では、既定でサイトの権限がライブラリ・フォルダ・ファイルへ引き継がれる。Microsoftは継承を切らず、個別のファイルやフォルダは共有リンクで渡すことを勧めている | Googleの資料では、共有ドライブに移したファイルにアクセスできるのは、その共有ドライブのメンバーと、ファイルを直接共有された人 |
| 社外との共有 | 原則として社内ネットワークの中 | 組織全体とサイトごとに、社外共有の可否を設定できる。社外に出さない情報は、社外共有を止めたサイトに置くことをMicrosoftは勧めている | 社外の人が共有ドライブに追加した内容は、組織のものになる |
もう1つの違いは、ファイルの持ち主です。Google ドライブでは、マイドライブのファイルは作った個人のもの、共有ドライブのファイルは 個人ではなくチームのもの で、Googleの資料では、メンバーが抜けてもファイルは共有ドライブに残るとされています。業務のファイルを個人の領域に置かない決まりが、退職時の手間を左右します。
表の使い方: 2段になっているWindowsの権限では、Microsoftの同じ資料が、共有側を広く開けてNTFS側だけで絞るやり方も挙げています。どちらかに統一しておくと、「どちらで止まっているのか」を調べる手間が減ります。クラウドでは「フォルダの階層で細かく切る」より「共有の単位(サイト・共有ドライブ)を分ける」ほうが、製品の考え方に合います。2節の表の行を、そのままサイトや共有ドライブの単位にできるのはこのためです。
5. 人が抜けるとき・入るとき
| 場面 | やること |
|---|---|
| 入社・異動 | グループの名簿に足す/移す。フォルダ側は触らない |
| 退職・外注終了 | アカウントを止める → グループから外す → 個人用の領域に残った業務ファイルを共有の単位へ移す。順番の全体は 退職・外注終了のときに止めるアカウントの一覧 |
| 個人が持ち主のファイルが、共有の場所の外に残っている | アカウントを削除する前に、持ち主を移す(削除すると一緒に消えるサービスがある)。退職者のデータをどこまで見てよいか・いつまで残すかは、就業規則と専門家に確認する |
| 半年に1回 | 名簿の棚卸し。各グループの責任者に名簿を見せ、「いまも必要か」を確認してもらう |
6. 確認表
| # | 確認すること | 済 |
|---|---|---|
| 1 | 個人に直接付けた権限が無い(あれば、グループに置き換える予定がある) | □ |
| 2 | 部署×役割の表があり、全社員が見られる | □ |
| 3 | 権限を変えている場所が、上から2階層までに収まっている | □ |
| 4 | 「全社員」に編集の権限を与えている場所が無い | □ |
| 5 | 管理者が2人いて、うち1人が不在でも変更できる | □ |
| 6 | 社外と共有する場所が、社内用と分かれている | □ |
| 7 | 退職時の手順に「グループから外す」「持ち主を移す」が入っている | □ |
| 8 | 名簿の棚卸しの月が決まっている | □ |
→ 引っ越しの全体は NAS・ファイルサーバからクラウドへの引っ越し全体図、グループの土台になるアカウント管理は AD/Entra ID/何も入れないの判断表
出典(取得日: 2026-09-20)
- Microsoft Learn “Share and NTFS Permissions on a File Server”(Windows Server 2008 R2 向けの旧版の文書) https://learn.microsoft.com/en-us/previous-versions/windows/it-pro/windows-server-2008-R2-and-2008/cc754178(v=ws.11)
- Microsoft Learn “Access Control Overview” https://learn.microsoft.com/en-us/windows/security/identity-protection/access-control/access-control
- Microsoft Learn “Permissions inheritance in SharePoint” https://learn.microsoft.com/en-us/sharepoint/what-is-permissions-inheritance
- Microsoft Learn “Sharing & permissions in the SharePoint modern experience” https://learn.microsoft.com/en-us/sharepoint/modern-experience-sharing-permissions
- Microsoft サポート “Restrictions and limitations in OneDrive and SharePoint” https://support.microsoft.com/en-us/office/restrictions-and-limitations-in-onedrive-and-sharepoint-64883a5d-228e-48f5-b3d2-eb39e07630fa
- Google Workspace 管理者ヘルプ “Shared drive access levels” https://support.google.com/a/answer/7337554?hl=en
- Google Workspace 管理者ヘルプ “What are shared drives?” https://support.google.com/a/answer/7212025?hl=en
- Google Workspace 管理者ヘルプ “Shared drive limits in Google Drive” https://support.google.com/a/answer/7338880?hl=en
- Google Workspace 管理者ヘルプ “Options to preserve former employee data” https://knowledge.workspace.google.com/admin/getting-started/options-to-preserve-former-employee-data