小さな事業のIT手帖

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手順

古いNASをやめてクラウドへ。コピーより前にやる2つで成否が決まる

公開 更新 読了11分

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社長に「NASがもう古いから、クラウドにしておいて」と言われた。容量を調べ、移行ツールを探し、週末にコピーを流す段取りを考え始めている。たぶん、いまそのあたりだと思います。

先に言うと、この引っ越しの成否はコピーを始める前の2つ、棚卸しと権限の設計で決まります。コピー自体はツールがやってくれます。失敗する会社は、10年分のフォルダを権限ごと丸ごと運び、「誰が何を見られるのか誰も説明できない置き場所」をクラウドに作り直してしまいます。この記事を読み終えると、移す物と移さない物を分けられ、移行先の上限に当たる前に気づけて、旧NASをいつ処分してよいかを自分で決められます。

先に結論:私が守っている決まり

①棚卸し → ②権限の設計 → ③移行方式を選ぶ → ④並行期間 → ⑤切替 → ⑥旧NASの処分

  • 権限は運ばない。作り直す。 理由は3節に書きます。フォルダ構造ごと権限つきで丸ごと移すのは、私は勧めません。
  • 3年開いていないフォルダは移さない。 保管用として別に分けます。移す量が減れば、上限にも日数にも余裕ができます。
  • 旧NASは切替の日に読み取り専用にし、最低1か月、決算をまたぐならその周期が1周するまで処分しない。 この工程で戻せないのは⑥だけです。ここを急がないことが、全体の保険になります。
目次(7)
  1. 1. 全体図:6工程と、戻せるかどうか
  2. 2. 工程1:棚卸し(記入して使う)
  3. 3. 工程2:権限は運ばず、作り直す
  4. 4. 工程3:移行方式を選ぶ
  5. 5. 工程4〜5:並行期間と切替
  6. 6. 工程6:旧NASを処分する前に
  7. 出典(取得日: 2026-09-20)

1. 全体図:6工程と、戻せるかどうか

順工程やること戻せるか省くと起きること
1棚卸し容量、ファイル数、深い階層、長いパス、使われていないフォルダ、今の権限を調べる戻せる(調べるだけ)移行の途中で上限に当たり、やり直しになる
2権限の設計移行先の共有の単位と、部署×役割の表を先に決める戻せる(紙の上)全員が全部を見られる、または誰も開けない状態で始まる
3移行方式の選択公式の移行ツール/同期アプリ/手作業のコピーから選ぶ戻せる更新日時や権限が想定と違う形で移る
4並行期間旧NASを残したまま差分を繰り返し移し、1部署で先に試す戻せる切替日に初めて問題が見つかる
5切替旧NASを読み取り専用にして最後の差分を移し、以後は新しい場所だけに書く戻せる(旧NASがある間)新旧の両方に書き込まれ、どちらが最新か分からなくなる
6旧NASの処分バックアップを確認してからデータを消去し、処分する戻せない移し漏れに気づいたときに原本が無い

2. 工程1:棚卸し(記入して使う)

調べること記入欄何のために見るか
全体の容量とファイル数  GB/  件移行先の上限と、移すのにかかる日数の見積もり
最も深い階層と、最も長いパスの文字数  階層/  文字パス長・階層の上限に当たらないか
ファイル名・フォルダ名に使っている記号移行先で使えない文字が無いか
3年以上開かれていないフォルダ移さずに保管用へ分ける
個人名のフォルダ、退職者のフォルダ持ち主を決め直す
業務ソフトが直接読み書きしている場所クラウドに移すと動かなくなることがある。ソフトの提供元に確認
複合機のスキャンの保存先切替の日に必ず直す場所
今の権限(誰が・どのフォルダに・何ができるか)工程2の材料
今のバックアップの方法移行後のバックアップを決め直す

「3年」は私の目安です。保存義務のある書類は捨てるのではなく、読み取り専用の保管場所(保管用の共有ドライブやライブラリを1つ)にまとめます。日常の置き場所に混ぜないことが目的です。よくあるのは、「念のため全部」と言われて全部を移し、検索結果が10年前の見積書で埋まって、利用者が新しい場所を嫌いになる形です。

見落としが多いのは業務ソフトの行です。会計・販売管理・CADなどが共有フォルダ上のデータファイルを直接開いている場合、その部分はクラウドストレージに移すと動かなくなるか、同期の競合で壊れます。私ならその部分だけは社内に残します。 全部をクラウドへ、にこだわる理由はありません。

上限の例(公式ページで確認できたもの・取得日 2026-09-20)

数値は変わります。自社が使うサービスの公式ページで、同じ項目を確かめてください。

項目Microsoft 365(SharePoint・OneDrive)の例Google ドライブ(共有ドライブ)の例
ファイル数同期は、性能面の推奨として合計30万件まで1つの共有ドライブに50万件まで(フォルダ・ショートカット・ゴミ箱内を含む)
パス・階層ファイル名を含むパス全体で400文字まで。空白や記号は、見た目より長く数えられる場合があると公式ページに注記があるフォルダの入れ子は100階層まで
1ファイルの大きさ250GBまで5TBまで
名前に使えないもの" * : < > ? / \ と縦棒、先頭・末尾の空白。CON PRN AUX NUL などの名前、~$ で始まる名前(この記事では未確認)
1日に上げられる量(この記事では未確認)利用者1人あたり24時間で750GBまで
個別の権限の数1つのライブラリで個別権限は5万件が上限、推奨は5,000件まで(この記事では未確認)

この表から私が引く結論は2つです。ファイル数が多い会社は、1つの置き場所に全部を入れず、部署や用途で分ける。そして個別の権限に上限と推奨値がある以上、ファイル単位・深い階層での権限の付け替えを持ち込まない。日本語の長いフォルダ名を何段も重ねたNASでは、400文字のパス上限は珍しくなく当たります。当たるのはたいてい移行の終盤で、エラーの一覧を見て初めて知ることになります。だから棚卸しで先に測ります。

3. 工程2:権限は運ばず、作り直す

Microsoftの公式資料によると、公式の移行ツールでファイル共有から権限を引き継げるのは「読み取り」「書き込み」「フルコントロール」の3種類で、「拒否」などの特殊な権限は引き継がれません。引き継ぐには、元の利用者に対応する利用者が移行先にいること(社内のディレクトリとの同期、または対応表)が前提です。対応が無い場合は、移行先の場所の既定の権限が付きます。

つまり「今の権限をそのまま運ぶ」ことは、条件がそろったときに一部だけ出来る話です。そして小さな会社のNASの権限は、たいてい運ぶ価値がありません。よくあるのは、「あの人だけ見られるように」の付け足しが10年積もり、退職者の名前が残り、拒否の設定で無理やり隠したフォルダがある状態です。NASのローカルユーザーで運用していれば、移行先に対応する利用者もいません。

私なら、移行先の共有の単位(共有ドライブ、サイト)を部署や用途で5〜10個に分け、権限はその単位にグループで付け、下の階層では変えません。 「全社」「経理」「人事」「役員」「取引先共有」くらいから始めて足ります。数は私の目安です。理由は、移行後に「この人は何が見えるか」に答えられるのが、この形だけだからです。

→ 表の作り方は 共有フォルダの権限設計。名簿の土台は AD/Entra ID/何も入れないの判断

4. 工程3:移行方式を選ぶ

移行先は、いまメールで契約しているグループウェアの側のストレージを勧めます。Microsoft 365ならSharePointとOneDrive、Google Workspaceなら共有ドライブです。利用者の名簿がすでにそこにあり、退職時の停止が1か所で済むからです。ストレージ専業のサービスを別に契約するのは、取引先との大容量のやり取りが多いなど、はっきりした理由があるときだけにします。

状況向く方式私の評価
移行先がMicrosoft 365で、件数が多い・差分を繰り返し移したい公式の移行ツール(SharePoint Migration Tool)。Microsoftが社内のファイル共有からの移行用に無償で案内しているこれを使います。 タスクを保存して再実行すると新規・更新分だけを移せる(差分移行)。移行前のスキャンで、上限に当たるファイルが先に分かる
移行先がGoogle Workspace共有ドライブを先に作り、そこへ上げる個人のマイドライブではなく、必ず共有ドライブへ。共有ドライブのファイルはチームのもので、Googleの資料ではメンバーが抜けてもファイルは残るとされている。マイドライブに置くと、退職のたびに持ち主の移し替えが要る
数十GB・数千件程度で、階層が浅い同期アプリ、またはブラウザからの手作業出来るが、途中で失敗したときに「どこまで移ったか」を自分で照合することになる。件数を移行前後で必ず比べる
業務ソフトが共有フォルダを直接使っているその部分は移さず、社内に残す残した部分のバックアップと権限は、引き続き社内で面倒を見る

5. 工程4〜5:並行期間と切替

  1. 部署を1つ選び、先に移して1〜2週間使ってもらう。困りごと(開けない、探せない、リンクが切れた)を記録する。
  2. 記録をもとに、分け方と権限を直す。
  3. 残りの部署を順に移す。旧NASにはまだ書き込めるので、差分を定期的に移す。
  4. 切替日を決めて周知する。当日、旧NASの共有を読み取り専用に変え、最後の差分を移す。
  5. 移行前後でファイルの件数と容量を比べ、記録する。
  6. 旧NASを指すショートカット、業務ソフトの保存先、複合機のスキャンの保存先を新しい場所に直す。

事故は4で起きます。読み取り専用にせずに切り替えると、デスクトップのショートカットから古い場所に書き続ける人が必ず出ます。発覚するのは数週間後、「先週直した見積が無い」と言われたときで、そこから新旧を人の目で突き合わせることになります。周知のメールでは防げません。書けなくするのがいちばん確実です。

6. 工程6:旧NASを処分する前に

#確認すること済
1切替から1か月以上たち、月次・年次の業務を少なくとも1周した□
2移行前後の件数・容量の記録が残っている□
3移行先のバックアップを決め、復元を1回試した(クラウドに置いただけではコピーは増えていない)□
4旧NASの電源を落とした状態で1〜2週間、業務に支障が出なかった□
5データの消去の方法を、機器のメーカーの公式手順で確認した□

4は処分の前の最後の試験です。電源を落として誰も困らなければ、依存は残っていません。困る人が出たら、その人が開こうとした物が移し漏れです。

→ バックアップの決め方は 3-2-1のバックアップ、NASを残す場合は RAIDはバックアップではない

出典(取得日: 2026-09-20)

この記事は特定の製品の使用レビューではありません。公式仕様と公的情報をもとに整理しています。 ・仕様の取得日

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