結論
- MXレコードを切り替えると、新しく届くメールは新しい事業者に入ります。過去のメールは旧サーバに残ったままで、自動では移りません。移す作業は別に要ります。
- 最初に確かめるのは「過去のメールがいまどこにあるか」です。IMAPで使っていればサーバ上に、POPで使っていればパソコンの中にある可能性が高く、移し方が変わります。
- 移す方法は大きく3つです。①移行先の事業者が用意している移行機能、②メールソフトに新旧2つのアカウントを並べてフォルダごとコピーする、③移さずに手元に保管して旧サーバの解約まで参照する。
- 旧サーバの解約は、移した結果を件数で確かめた後にします。解約すると、サーバ上のメールは取り出せなくなります。
引っ越し全体の順番は次の記事にあります。
1. 過去のメールはどこにあるか
| 方式 | 仕組み | 過去のメールの場所 |
|---|---|---|
| IMAP | サーバ上のメールボックス(フォルダ)とメッセージを、メールソフトから操作する方式。既読などの状態(フラグ)もサーバ側に持つ(RFC 9051) | サーバ上。複数の端末から同じ内容が見える |
| POP | サーバからメッセージを取り出す方式。取り出した後にサーバから削除する使い方が想定されている(RFC 1939) | 取り出したパソコンの中。設定によってはサーバにも一定期間残る |
メールソフトのアカウント設定の画面で、受信サーバーの種類が「IMAP」「POP(POP3)」のどちらになっているかを見ます。端末ごとに違う設定になっていることもあるので、使っている端末すべてで確かめます。
2. 状況から方法を選ぶ
| いまの状況 | 進め方 |
|---|---|
| 旧サーバをIMAPで使っている。移行先に公式の移行機能がある | 方法①。3節へ |
| 旧サーバをIMAPで使っている。移行機能が無い、または数人だけ | 方法②。4節へ |
| POPで使っていて、メールはパソコンの中にある | メールソフトに新しいアカウント(IMAP)を足し、パソコンの中のフォルダから新しいアカウントのフォルダへコピーする(4節と同じ要領) |
| 過去のメールはたまに見返せれば足りる | 方法③。メールソフトの書き出し機能で手元に保管し、バックアップの対象に入れる |
| 旧サーバをすでに解約してしまった | サーバ上のメールは取り出せない。パソコンやスマートフォンのメールソフトに残っている分が手がかりになる |
全部を移すか、期間を区切るかも先に決めます。量が多いほど時間がかかり、途中で止まったときの確認も増えます。
3. 方法①:移行先の公式の移行機能を使う
移行先の事業者が、旧サーバへIMAPで接続してメールをコピーする機能を用意していることがあります。考え方は共通で、「旧サーバの名前」「各メールボックスのIDとパスワード(または管理者の資格情報)」を移行先に登録し、移行先のサーバが旧サーバから読み出します。
下は公式の案内がある例です(取り上げた2つは例で、ほかの事業者にも同様の機能があります。移行先の公式ヘルプで確認します)。
- Microsoft 365 のIMAP移行: Microsoftの案内によると、移せるのは受信トレイなどのメールフォルダの中身で、連絡先・予定表・タスクは移りません。1つのメールボックスにつき最大500,000件、1通の大きさは35MBまで、という上限があります。旧サーバ側で接続数を制限していると、移行に時間がかかります。
- Google Workspace のデータ移行: Googleの管理者ヘルプに、IMAPのアカウントからメールを移す手順が載っています。移行元の各ユーザーのパスワード(IMAPサーバーによってはアプリケーション固有のパスワード)を使います。
どの事業者の機能でも、始める前に見る項目は次のとおりです。
| 見る項目 | 自分の場合(記入) |
|---|---|
| 移るもの・移らないもの(連絡先、予定表、振り分けルール、署名) | |
| 1通の大きさと件数の上限 | |
| 旧サーバのIMAPのサーバ名とポート | |
| 旧サーバ側の接続数の制限 | |
| 移行に使うパスワードの扱い(終わった後に変えるか) | |
| 移行の途中で届いたメールを、後から追加で取り込めるか |
Microsoftの案内は、移行を終えてからMXレコードを切り替え、すべてのメールが新しい側に届くことを確かめた後で同期を止める、という順番を示しています。連絡先や予定表は、メールとは別に書き出しと取り込みの手順が要ります。移行の場面では、ここが抜けたまま旧サーバの解約日を迎えることが起こりやすいので、表の1行目を先に埋めます。
4. 方法②:メールソフトでフォルダごとコピーする
- メールソフトに、旧アカウント(IMAP)と新アカウント(IMAP)の両方を設定する。
- 旧アカウントのフォルダを選び、新アカウントの側へコピーする(移動ではなくコピーにすると、旧側に原本が残る)。
- フォルダ単位で進め、1つ終わるごとに件数を見比べる。
- 新しいアカウントを別の端末やウェブメールで開き、サーバ上に入っていることを確かめる。
メールソフトの中で見えているだけでは、まだサーバに送り終えていないことがあります。4の確認は、コピーに使ったのとは別の入口から行います。量が多いときは、年ごとなど小さな単位に分けます。
5. 確認表
| # | 確認すること | 済 |
|---|---|---|
| 1 | 使っている端末すべてで、受信の方式(IMAP/POP)を確かめた | □ |
| 2 | 旧サーバ上のフォルダごとの件数を控えた | □ |
| 3 | 移す範囲(全部/期間を区切る)を決めた | □ |
| 4 | 移す方法を選んだ(①移行機能/②メールソフトでコピー/③手元に保管) | □ |
| 5 | 連絡先・予定表・振り分けルール・署名など、メール以外の移し方を決めた | □ |
| 6 | 移した後、フォルダごとの件数を新旧で見比べた | □ |
| 7 | 添付ファイルつきのメールと、古い年のメールを数通ずつ開いて確かめた | □ |
| 8 | 切り替えの前後に旧サーバへ届いたメールが残っていないかを確かめた | □ |
| 9 | 移行に使ったパスワードを変えた | □ |
| 10 | 1〜9が済むまで、旧サーバを解約していない | □ |
8は、MXレコードを切り替えた直後に起こります。古い答えを覚えている送信元は、しばらく旧サーバへ届け続けます。
手元に保管したメールは、バックアップの対象に入れておきます。
出典(取得日: 2026-09-20)
- RFC 9051 Internet Message Access Protocol (IMAP) - Version 4rev2 https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc9051.html
- RFC 1939 Post Office Protocol - Version 3 https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc1939.html
- Microsoft Learn “What you need to know about migrating your IMAP mailboxes to Microsoft 365 or Office 365” https://learn.microsoft.com/en-us/exchange/mailbox-migration/migrating-imap-mailboxes/migrating-imap-mailboxes
- Google Workspace 管理者ヘルプ「IMAP アカウントからメールをインポートする」 https://knowledge.workspace.google.com/admin/migrate/migrate-email-from-an-imap-account?hl=ja