結論
確認の順番は次の4つです。上から順に見ると、原因を切り分けやすくなります。
- 新しいネームサーバーにMXレコードがあるか(旧側のレコードは自動では引き継がれません)
- TTLの時間がまだ残っていないか(古い答えを覚えているリゾルバがいる間は、旧サーバへ届きます)
- 旧サーバ側の設定(旧側に残したドメイン設定や転送)
- SPF(送れるが相手に届かない、迷惑メールに入る場合)
引っ越し全体の順番は、別の記事にまとめています。
1. MXレコードを確かめる
ネームサーバーを替えると、DNSの答えは新しい事業者のDNSに登録した内容だけになります。
いま見えている答え
dig +noall +answer example.com MX
example.com. 3600 IN MX 10 mail.example.com.
(値は例です。example.com 自体を実際に引くと、メールを受け取らないことを示す 0 . が返ります。)左から、名前、TTLの残り秒数、クラス、種類、優先度、メールサーバーの名前です。優先度は数字の小さいほうが先に使われます(RFC 5321 5.1節)。
Windowsでは nslookup を使います。
nslookup -type=MX example.com
新しいネームサーバーに直接聞く
キャッシュの影響を除くには、ネームサーバーを指定して聞きます。
dig +short example.com NS
dig @ns1.example.net example.com MX +noall +answer
ns1.example.net は、1行目で返ってきた新しいネームサーバーの名前に置き換えます。nslookup -type=MX example.com ns1.example.net でも同じです。
| 結果 | 読み方 | 次にすること |
|---|---|---|
| MXが返り、新しいメールサーバーを指している | DNSは正しい | 2へ |
| MXが返るが、旧メールサーバーを指している | 旧側の値を写したまま | 新しいメールサービスの指定値に直す |
| MXが1行も返らない | 写し忘れ | MXを登録する。あわせてSPF・DKIM・DMARCのTXTも確かめる |
| MXの先の名前のA / AAAAが引けない | メールサーバー名の登録漏れ | dig +short mail.example.com A で確かめ、登録する |
MXが1行もないとき、送信側はドメイン名そのもののA / AAAAレコードの宛先へ届けようとします(RFC 5321 5.1節の「implicit MX」)。メールがWebサーバへ向かうことになります。
また、MXの値にCNAMEの別名を書いてはいけません(RFC 2181 10.3節)。AまたはAAAAを持つ名前を書きます。
2. TTLの残りを確かめる
TTLはDNSの答えをキャッシュしてよい秒数です(RFC 1035)。切り替え前のTTLが長いと、その時間が過ぎるまで、一部の送信元は旧サーバへ届け続けます。
dig +noall +answer example.com NS
dig +noall +answer example.com MX
- 2列目の数字が、問い合わせたリゾルバが覚えている残り秒数です。繰り返すと減っていきます。
- 公開リゾルバを指定すると、外からの見え方を比べられます。
dig @192.0.2.53 example.com MX(192.0.2.53 は例です。確かめたい公開DNSのアドレスに置き換えます)。 - NSの指定は上位(.com や .jp)のDNSにも登録されており、そちらのTTLは自分では変えられません。
この間に旧サーバへ届いたメールは、旧側のメールボックスに入っています。 旧側のWebメールなどで受信を確かめてください。
3. 旧サーバ側の設定を確かめる
「多くの相手からは届くのに、特定の経路からだけ届かない」場合に見る点です。どう扱われるかは事業者ごとに違うので、公式ヘルプで確認します。
| 場面 | 確認する点 |
|---|---|
| 旧サーバにドメインとメールアドレスの設定を残している | 旧サーバ上のフォームやプログラムから自分あてに送ったメールが、旧メールボックスに入っていないか |
| 旧側に転送設定が残っている | 旧側に届いた分が、意図しないアドレスへ転送されていないか |
| 旧側のメールボックスを先に消した | 並行期間中に旧側へ届いた分を受け取れない。送信者へ再送を頼む |
並行期間が終わったら旧側のドメイン設定を外します。外す前に旧メールボックスの中身を保存します。
4. SPFを確かめる
「送信はできるが相手に届かない・迷惑メールに入る」ときは、SPFのTXTを見ます。
dig +short example.com TXT
"v=spf1 include:_spf.example.net ~all"
| 確認点 | 根拠 |
|---|---|
v=spf1 で始まる行が1つだけある(2つあると結果は permerror) | RFC 7208 4.5節 |
新しいメールサービスが指定する include などが入っている | 各サービスの公式ヘルプ |
| 旧サーバから送らなくなったら、旧側の指定を外す | 同上 |
| DNSの問い合わせを伴う項目は合計10回まで | RFC 7208 4.6.4節 |
DKIMとDMARCのTXTも、ネームサーバーを替えたときに写す対象です。書式と確認方法は次の記事にあります。
最後に、外部のアドレスとの間で送受信のテストをし、受信したメールのヘッダーで SPF / DKIM の結果が pass になっているかを見ます。
5. 確認表
| # | 確認すること | コマンド・方法 | 済 |
|---|---|---|---|
| 1 | 新ネームサーバーがMXを返す | dig @新NS example.com MX | □ |
| 2 | MXの先の名前にA / AAAAがある | dig +short mail.example.com A | □ |
| 3 | 外から見たNSが新しい側になっている | dig +short example.com NS | □ |
| 4 | 旧サーバのメールボックスに新着がないか見た | 旧側のWebメール | □ |
| 5 | 旧サーバ側に残っている設定を把握した | 旧側の管理画面 | □ |
| 6 | SPFが1行で、新しい送信元を含む | dig +short example.com TXT | □ |
| 7 | DKIM・DMARCのTXTが引ける | dig +short TXT _dmarc.example.com など | □ |
| 8 | 送受信テストで pass | 受信メールのヘッダー | □ |
ドメインの登録先そのものを移す「移管」は、ネームサーバー変更とは別の手続きです。
出典(取得日: 2026-09-20)
- RFC 1035 Domain Names - Implementation and Specification(TTL、MX) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc1035.html
- RFC 2181 Clarifications to the DNS Specification(8節、10.3節) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc2181.html
- RFC 5321 Simple Mail Transfer Protocol(5.1節) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc5321.html
- RFC 7208 Sender Policy Framework(4.5節、4.6.4節) https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc7208.html