RAIDはバックアップではない:NASの冗長化とバックアップの違いと、3-2-1への当てはめ

小さな事業のIT・バックオフィス公開

この記事は特定の製品の使用レビューではありません。公式仕様と公的情報をもとに整理しています。 ・仕様の取得日

結論

  • RAIDは「ディスクが1台(方式によっては2台)壊れても、データを失わずに動き続ける」ための仕組みです。バックアップは「失ったデータを、過去の時点から戻す」ための仕組みです。目的が違うので、片方でもう片方の代わりにはなりません。
  • RAIDは、書き込み・削除・上書きをそのまま受け入れます。誤って消した・上書きした・マルウェアに暗号化された、という変更もそのまま書き込まれるので、RAIDの中に「消す前の状態」は残りません。
  • NASを3-2-1ルールで数えると、RAIDを組んだNASは ディスクが何台あってもコピー1つです。原本がNASなら、あと2つ(手元の別の媒体と、建物の外)が要ります。
  • RAIDが不要という話ではありません。業務を止めないための備えとして意味があります。役割を分けて、両方を用意します。

1. RAIDレベルの定義(SNIAの用語集)

RAIDは Redundant Array of Independent Disks の略です。ストレージの業界団体SNIAの用語集は、各レベルを次のように定義しています(要約)。

レベルSNIAの定義の要約耐えられるディスクの故障
RAID 0連続するデータのブロックを、複数の独立した記憶装置に均等に分散して置く。冗長性は一切提供しない(ストライピング)0台。1台の故障で全体を失う
RAID 1各ブロックを、2つ以上の独立した記憶装置に保存する(ミラーリング)1台の故障ではデータを失わない
RAID 5n個のデータのブロックと1個のパリティを、n+1台の記憶装置にまたがって、データとパリティを交互に配置して保存する1台の故障ではデータを失わない
RAID 6パリティによる保護で、任意の2台の故障でもデータを失わない2台

定義に出てくるのは、どれも「記憶装置の故障」に対する耐性だけです。ファイルの削除、上書き、機器全体の故障、盗難、火災・水害は、定義の対象に入っていません。メーカーの解説も同じ整理で、Western Digitalの公式ブログは、RAIDは保存の信頼性を高めるがデータのバックアップと同じものではない、と説明しています。

NASのメーカー独自の方式(ディスクの容量が違っても組める方式など)もあります。耐えられる故障の台数は、メーカーの公式資料で確認してください。

2. 何から守れて、何から守れないか

起きることRAID(冗長化)バックアップ(世代あり)
ディスクが1台壊れた守れる(動き続ける。RAID 0を除く)戻せる(戻すまで止まる)
耐えられる台数を超えてディスクが壊れた守れない戻せる
ファイルを誤って消した・上書きした守れない(変更がそのまま反映される)戻せる
マルウェアにファイルを書き換えられた守れない(同上)戻せる。ただし、NASから常に書き込める場所に置いたバックアップは一緒に書き換えられることがある
NAS本体(電源・基板)が壊れた守れない。ディスクが無事でも、別の機器でそのまま読めるとは限らない戻せる
盗難、火災、水害、落雷守れない建物の外にあれば戻せる

US-CERT(現CISA)の資料は、上書きしていく方式のバックアップが、原本の破損やマルウェアをそのままバックアップへ広げることがある、と注意しています。NASの機能で別の場所へ「同期」しているだけの構成も同じ性質を持ちます。**過去の時点に戻れること(世代管理)**が、バックアップと呼べる条件です。

3. NASを3-2-1に当てはめる

3-2-1ルールは「コピーを3つ、2種類の媒体に、1つは建物の外に」です(定義は 3-2-1のバックアップ)。自分の状況に近い行を選びます。

状況原本バックアップ1(手元)バックアップ2(建物の外)足りていない点を見つける問い
共有ファイルの置き場所がNAS。各自のパソコンには置かないNAS(RAIDはここに含まれる)NASにつないだ外付けディスク、または2台目のNASへ、世代つきでクラウドのバックアップ、または定期的に入れ替えて別の建物に置く外付けディスクNASが丸ごと無くなった日に、何から戻すか言えるか
NASは、各パソコンのバックアップ先として使っている各パソコンNASクラウド、または別の建物に置く媒体NASとパソコンが同じ部屋にあるなら、建物の外の1つが無い
NASからクラウドへ「同期」しているNASクラウド側に、削除・変更の前の版が残る設定か同期だけでは、誤削除も同期される。版の保存期間を公式ヘルプで確認
NASをやめて、クラウドストレージへ移す予定クラウド書き出したコピーを手元に別のクラウド、または別の媒体クラウドに置いただけではコピーは増えていない → 引っ越し全体図

設計の理由を1つだけ挙げると、バックアップ先は、原本と「同時に失う原因」を共有しないように選ぶ、です。同じ筐体の中(RAID)、同じ電源タップ(落雷)、同じ部屋(火災・盗難)、常に同じ権限で書ける場所(マルウェア)は、それぞれ同時に失う原因を共有しています。

4. 失敗しやすい点

失敗の型起きる理由手当て
「RAID 1だからバックアップは取っている」と思っている2台に同じ内容がある=コピーが2つ、に見える3-2-1ではコピー1つと数える。2節の表で確認する
ディスクの故障の通知に誰も気づかない通知の宛先が未設定、または退職者のアドレス通知の宛先を役割のアドレスにする。故障したまま動き続けるのがRAIDなので、気づかないまま耐えられる台数を超えると全体を失う
同じ時期に買った同じディスクで組み、交換用が手元に無い導入時のまま交換の手順と、対応するディスクの型番をメーカーの公式資料で確認しておく
バックアップ先の外付けディスクを、NASにつないだままにしている外す運用が続かない世代つきの自動バックアップに加え、建物の外の1つを別に持つ
停電で、書き込み中のNASが落ちる無停電電源装置が無い、または連動の設定が無いUPSの容量計算と仕様の読み方
戻したことが無い取ることが目的になっている下の確認表の6

5. 確認表(記入して使う)

#確認すること記入
1NASのRAIDの方式と、耐えられる故障の台数方式:  /  台
2ディスクの故障の通知の宛先と、最後に通知のテストをした日
3NASのデータの、手元のバックアップ先と世代数
4建物の外のバックアップ先
5バックアップ先は、NASの利用者のアカウントから書き換えられない場所かはい/いいえ
6ファイルを1つ、バックアップから別の場所へ戻して開けた日
7NASの管理者アカウントの2要素認証と、管理者が2人いること

6が空欄なら、まだ「取れているはず」の段階です。戻す手順は 3-2-1のバックアップ の復元テストの表を使ってください。NASの共有フォルダの権限は 共有フォルダの権限設計 にまとめています。

出典(取得日: 2026-09-20)