開業1年目に要るITの一覧と、決める順番

小さな事業のIT・バックオフィス公開

この記事は特定の製品の使用レビューではありません。公式仕様と公的情報をもとに整理しています。 ・仕様の取得日

結論

  • 決める順番は ドメイン → メール → 会計 → 請求 → バックアップ → パスワード管理 です。前の項目が後ろの項目の前提になるものを先に置いています。
  • 順番の理由は2つです。1つは「後から変えると、取引先や登録済みのサービスすべてに影響するもの」を先に決めること。もう1つは「データが溜まり始める前に、守る仕組みを用意する」ことです。
  • 各項目には「今決めること」と「先延ばしにしてよいこと」があります。
  • 1人か、従業員がいるか、店舗があるかで、足す項目が変わります(0節の2つ目の表)。この記事は入口で、設定の手順は各項目のリンク先にあります。

0. 全体の一覧

項目今決めること
1ドメイン名前、登録する事業者、登録者の名義
2メール独自ドメインのメールの方式、SPF・DKIM・DMARC
3会計記帳の方法、事業用の口座・カードの分離
4請求請求書の様式、番号の振り方、保存の場所
5バックアップ何を、どこへ、どの頻度で
6パスワード管理記録の方式、2要素認証をかける順番

先延ばしにしてよいことは、各節に書いています。

状況別:足す項目と、先に読む記事

状況上の一覧に足すこと先に読む記事
1人で、自宅で仕事をするドメインの登録者情報に自宅の住所が出ないかの確認ドメインをどこで取るか
従業員や手伝ってくれる人がいる共有アカウントの利用者の一覧、人が抜けたときにパスワードを変える手順、共有ファイルのバックアップ担当パスワード管理と2要素認証
店舗・事務所がある停電時に動かし続けたい機器(レジ・ルーター等)の洗い出し、建物の外に置くバックアップUPSの容量計算3-2-1のバックアップ
従業員が10人を超えた/IT担当を兼任している共有フォルダの置き場所と権限の見直し、アカウント管理の土台(名簿の正本を1つにする)、退職時に止めるアカウントの一覧NAS・ファイルサーバからクラウドへの引っ越し全体図AD/Entra ID/何も入れないの判断表
すでに別の事業者でサイトやメールを動かしている新しく決める前に、引っ越しの順番を確認する引っ越し全体図

複数に当てはまるときは、当てはまる行をすべて足します。

1. ドメイン

メールアドレスとウェブサイトの両方の土台です。使い始めてから変えると、名刺・請求書・各サービスの登録を全部直すことになるので、最初に決めます。

  • 今決めること: 名前(短く、読み上げて伝わるもの)、登録する事業者、登録者の名義(個人か、事業の名義か)、更新の方法(自動更新にするか)。
  • 先延ばしにしてよいこと: ウェブサイトの中身。ドメインだけ先に取り、メールから使い始めて構いません。

静的サイトとCDNの構成の例

2. メール

独自ドメインのメールは、取引先から見た連絡先であると同時に、ほかのサービスのパスワード再設定が届く先にもなります。

  • 今決めること: メールの持ち方(グループウェア、レンタルサーバー付属、メール専用のいずれか)と、送信ドメイン認証の設定です。Googleの送信者ガイドラインは、Gmail宛てに送るすべての送信者にSPFまたはDKIMの設定を求めています。取引先にGmailの利用者がいる前提で、使い始める時点でそろえておきます。
  • 先延ばしにしてよいこと:info@example.com」のような役割別アドレスの追加や、メーリングリスト。1人のうちは1つで足ります。

SPF・DKIM・DMARCの設定の手順

3. 会計

  • 今決めること: 記帳の方法(会計ソフトを自分で使う/税理士等に依頼する/その併用)、事業用の口座とカードを私用と分けるかどうか、領収書・請求書の保存場所。
  • 先延ばしにしてよいこと: 部門別・案件別の管理や、細かな分析レポート。
  • ソフトを選ぶときは「自分の申告の種類に対応しているか」「銀行・カードの明細を取り込めるか」「データを書き出せるか」の3点を見ます。

帳簿や電子データの保存といった制度上の要件は、国税庁の案内が一次情報です。個別の判断は税理士・税務署に確認してください。この記事では扱いません。

4. 請求

会計の次に置くのは、請求書のデータが会計の入力元になるからです。

  • 今決めること: 請求書の様式(記載項目)、番号の振り方(例: 年月+連番)、控えの保存場所、送り方(PDFをメールで送るか、サービス上で発行するか)。
  • 先延ばしにしてよいこと: 毎月の定期請求の自動化、オンライン決済との連携。
  • 専用のサービス、会計ソフトに付属する機能、表計算のテンプレートのいずれでも作れます。会計と「二重入力にならない組み合わせ」を選びます。

5. バックアップ

メール・帳簿・請求書という「失うと事業が止まるデータ」が溜まり始める前に、仕組みを用意します。

  • 今決めること: 何を(会計・請求・契約書・制作物)、どこへ、どの頻度で。目安は、米国US-CERT(現CISA)の資料にある3-2-1(コピーを3つ、2種類の媒体に、1つは別の場所に)です。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」も、基本の対策の1つにバックアップを挙げています。
  • 先延ばしにしてよいこと: 専用機器(NAS等)の導入。パソコン本体+外付けの記憶媒体+クラウドで形になります。
  • クラウドの会計・請求サービスも、データを手元へ書き出す手順があるかを確認します。

3-2-1のバックアップの組み方

6. パスワード管理

1〜5で作ったアカウントを守る段です。一覧では最後ですが、ドメインを登録する時点で最初のアカウントができるので、記録の方式だけは1番目と同時に決めて、アカウントが増えるたびに足していきます。

  • 今決めること: 記録の方式(OS・ブラウザの組み込み機能/専用のパスワード管理ソフト/紙)と、2要素認証をかける順番。総務省の「国民のためのサイバーセキュリティサイト」は、パスワードを複数のサービスで使い回さないことと、多要素認証の利用を勧めています。
  • 2要素認証をかける順番は、メール → ドメイン・DNSの管理画面 → 銀行・決済 → 会計・請求、です。
  • 先延ばしにしてよいこと: 複数人での共有の細かな権限設計。1人のうちは要りません。

パスワード管理と2要素認証の進め方

7. 確認表

#確認すること
1ドメインの登録者の名義と、更新の方法を把握している
2ドメインの管理画面に登録した連絡先メールが、いま読めるアドレスである
3独自ドメインのメールの方式を決めた
4SPF・DKIM・DMARCのレコードを設定した
5記帳の方法、事業用の口座・カードの扱い、領収書・請求書の保存場所を決めた
6請求書の様式・番号の振り方・控えの保存場所を決めた
7バックアップの対象・保存先・頻度を決めた
8クラウドサービスのデータを手元に書き出す手順を確認した
9パスワードの記録の方式を決めた
10メール、ドメイン管理画面、銀行・決済・会計・請求の順に2要素認証を設定した
110節の状況別の表で、当てはまる行の項目を足した

出典(取得日: 2026-09-20)